当サイトではアフィリエイトプログラムを利用しています。

香港の最高峰・大帽山(タイモウサン)。その雄大な山の麓に、やわらかな霧に包まれる「川龍村(チュンルンチュン・Chuen Lung Tsuen)」という小さな村が佇んでいます。
この村には、在住者や香港通がわざわざ足を運ぶ、昔ながらの茶楼があります。それが、1960年代創業、60年以上の歴史を紡いできた「端記茶樓(ドゥン・ゲイ・チャ・ラウ・Duén Kee Tea House)」です。
ここでは、山の空気と共に味わう「端記茶樓」の魅力とともに、迷わず辿り着くためのアクセスや現地特有の作法まで、スムーズに楽しむための情報を詳しくご紹介します。読み進めるうちに、なぜこの店が長く愛されつづけているのか、その理由が見えてくるはずです。
60年の歴史を紡ぐ、香港飲茶の原風景

香港の人々にとって、飲茶は単なる食事ではなく、生活に根づいた社交の場。かつて労働者たちが一杯のお茶と二品の点心、いわゆる「一盅両件(いっちゅうりょうけん)」を囲み、一日の活力を得ていた時代から、その主役は常に「お茶」と「語らい」にありました。しかし近代化が進む香港の街中では、多くの古い茶楼が姿を消し、洗練されたレストランへと姿を変えていきました。
古くから客家(ハッカ)の人々が暮らしていた川龍村で、端記茶樓が1960年代から守ってきたのは、そんな「古き良き香港の日常」そのものです。厨房で湯気を上げる大きなガス釜、壁に並んだ年季の入ったメニュー札。常連客のおしゃべりと、小鳥たちのさえずり。ここには、めまぐるしく変化する都市部とは対照的な、穏やかな時間が今も変わらずに流れているのです。
湧き水が育むクレソンの故郷、川龍村

端記茶樓を語る上で欠かせないのが、川龍村の豊かな環境です。大帽山の麓、標高約250メートルに位置するこの村は、年間を通して霧が発生しやすく、涼しく水に恵まれた土地として知られています。
周囲に広がるクレソン(西洋菜)畑は、その象徴ともいえる存在。
端記茶樓で味わうお茶の、どこか角の取れたやわらかな口当たり。わざわざこの村まで足を運ぶ人が絶えない理由のひとつは、お茶の風味を際立たせる、清らかな水にもあるのでしょう。
食事の後に村を散策すれば、パッチワークのように広がる青々としたクレソン畑や、石造りの古い家屋を目にすることができます。
「早起き」が、最高のご馳走への第一歩

端記茶樓を存分に楽しむための鉄則、それは「朝早く現地に着くこと」。朝の清々しい空気の中で、鳥のさえずりを聞きながらお茶を啜る。この贅沢を味わえるのは、早起きした人だけの特権といえます。
営業時間は朝6:00から午後2:00頃まで
日の出とともに店は動き始めます。ピークは早朝から午前中。12時を過ぎると点心の補充が少なくなることもあるため、やはり午前中の訪問がおすすめです。
狙い目は朝7時〜9時
地元の人々が集う時間帯。蒸したての点心を囲み、自慢の鳥籠を吊るして語らう姿、小鳥の声、人々の活気に満ちた笑い声——「これぞ香港の朝」と呼びたくなる風景が広がります。
【アクセス】緑のミニバスに揺られてプチトリップ

香港中心部(中環・尖沙咀)からは、電車とミニバスを乗り継いで約1時間。街並みが徐々に緑へと変わっていく車窓も、この飲茶旅の醍醐味です。
1. 荃灣(チュンワン)駅へ

中環や尖沙咀からMTR荃灣線(赤ライン)で終点「荃灣駅」へ(約30分)。早朝6時台から数分おきに運行しています。
2. ミニバス(80番)に乗車

荃灣駅B出口から徒歩約5分、兆和街(Shiu Wo Street)より「80 川龍村」と表示された緑色のミニバスに乗り込みます。運行間隔は約7〜15分。座席は16〜19席ほどなので、満員になると早めに発車することも珍しくありません。そんな時は少しの間、次のバスを待ちましょう。複数人ならタクシー利用もおすすめです。
3. 乗車時に運賃を支払う

オクトパス(交通系ICカード)が最もスムーズです。 現金も使えますが、お釣りが出ないため注意が必要です。
4. 終点まで約20分、車窓を楽しむ

バスは勾配のある坂道をぐんぐんと登っていきます。市街地を離れ、景色が徐々に深い緑へと塗り替えられていく約20分弱の道のり。終点の川龍村が目的地です。
5. バス停からお店へ(徒歩約5分)

終点の川龍村バス停で下車すると、すぐそばに2軒の茶楼があります。手前にあるのは「彩龍茶楼」。目的地の「端記茶樓」は、バス停脇にある階段を降り、住宅地の間を抜けた先にあります。建物に書かれた大きな赤い店名が目印。バスを降りてから坂の先を覗き込むように探せばすぐに見つかります。隣のお店と間違えやすいので、看板の文字をしっかり確認して向かいましょう。
【作法】現地の空気に馴染む、セルフ飲茶の楽しみ方

端記茶樓には、至れり尽くせりのサービスはありません。でも安心してください。店内には日本語で書かれた、イラスト付きのガイドが貼られています。もしわからないことがあったら、お店の人に気兼ねなくジェスチャーで聞いてみましょう。きっと、手助けをしてくれるはずですよ。
1. 席を見つける

まずは空いている席を自分で確保します。おすすめは、緑を見渡せる2階のテラス席。なお、人気店ゆえに混雑時は「搭檯(ダップトイ/相席)」が当たり前。空いているスペースを見つけたら、周囲の方に軽く会釈をしながら「唔該、位呀(ムーゴイ、ウェイ・ア/すみません、席いいですか?)」と声をかけてみましょう。見知らぬ誰かと大きな円卓を囲むのも、この店ならではのローカルな醍醐味です
2. 給湯室でお茶を淹れ、洗杯をする

給湯室には、普洱(プーアル)、香片(ジャスミン)、寿眉(サウメイ)などの茶葉が置かれています。そこから好きな茶葉を急須に入れ、大きなボイラーから熱湯を注ぎます。食器を熱湯でゆすぐ「洗杯(サイブイ)」も忘れずに。
3. 点心を取りに行く

厨房近くの大きな蒸し器には、たくさんの点心が積み上げられています。蓋を開けるたびに立ち込める真っ白な湯気。その中から、「これだ」と思う一皿を自分のテーブルへ。蒸し物の他にも揚げ物・叉焼はもちろん、自分で鍋からよそうお粥や豆腐花、客家名物のもちもちケーキもおすすめです。(豆腐花は週末のみ)
4. 店の看板メニュー、クレソンを注文する

厨房の方へ「唔該、西洋菜( ムーゴイ、サイヨンチョイ/クレソンをください)」と声をかけます。麓の畑で採れたばかりのクレソンを強火で仕上げた一皿は、ここに来たら外せないメニューです。ただしクレソンは冬〜春先が旬のため、夏場など時期によっては提供されていない場合もありますのでご注意を。
5. 会計はテーブルで

食べ終わったら手を挙げて、店の人に「唔該、埋單(ムーゴイ、マイダン)」と声をかけましょう。テーブルで積み重なった皿や蒸籠の数をパパッと計算してもらい、その場で現金を支払うシステムです。予算の目安は点心の種類にもよりますが、お腹いっぱい食べて、お茶代込みで一人あたりおよそ 150〜300香港ドル(日本円で約3,000円〜6,000円)程度。香港の他の観光地や高級店に比べ手頃なローカル価格で楽しめます。
不便さを楽しむ、オールド香港らしい飲茶体験を

わざわざ山の麓まで足を運び、自分の手でお茶を淹れ、点心を選びに行く。端記茶樓を訪ねて過ごすプロセスは、決して便利なものではありません。
しかし、湯気の向こうに山の緑を眺めながらお茶を啜っていると、すぐ近くの煌びやかな香港の喧騒が、どこか遠い世界の出来事のように感じられてきます。そこにあるのは、時代が変わっても守り続けられてきた、穏やかな飲茶の原風景。
次回の香港旅行では、少しだけ早起きをして川龍村へ向かってみませんか? やわらかなお茶と美味しい点心、人々と鳥の声。そこでの一時はきっと、いつまでも記憶に残る飲茶体験になるでしょう。



※お出掛けの際には、必ず最新情報をウェブサイトでご確認いただくか、直接施設にお問い合わせください。
当サイトではアフィリエイトプログラムを利用しています。