14年ぶりに復活!
ウィーンとパリを結ぶナイトジェットで夜行を楽しむ列車旅

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Photo by 橋爪智之:パリ東駅に到着したナイトジェット

ヨーロッパでは環境問題の後押しにより、この数年にわたって急速に復権を果たした夜行列車。中でもオーストリア連邦鉄道のナイトジェットは、同国内のみならずヨーロッパ各国へ路線網を拡大しつつあります。今回は2021年12月のダイヤ改訂で14年ぶりに復活したウィーン~パリ間を結ぶ国際夜行列車ナイトジェットで快適な夜行の旅へご案内します。

ウィーンとパリを結ぶ国際夜行列車の旅

2021年12月13日に改訂された2022年冬ダイヤから、ナイトジェットの新しい路線が運行を開始しました。オーストリアの首都ウィーンを起点として、行き先はフランスの首都パリ。これまでナイトジェットは、ドイツ鉄道で2015年まで運行されていたシティナイトラインの路線を引き継いできました。今回、ウィーン~パリ間はこの中には含まれず、2007年まで運行されていた国際列車ユーロナイトの路線を継承しました。今回の運行開始は、約14年ぶりの復活ということになります。

夜行列車の旅のスタートはウィーン中央駅から

夜のウィーン中央駅

起点となるウィーン中央駅にはラウンジがあり、普通寝台を利用する乗客は、列車が出発する2時間前から出発時刻までここを利用することができます。ラウンジには、飲み物や軽食などが用意されており、外の喧騒から離れて快適に過ごすことができます。

ウィーン中央駅のラウンジ。ドリンクやスナックが無料で提供される

発車の15分前にはホームに列車が入ってきます。夜空を思わせる真っ青な車体のナイトジェットは、それだけで「旅に出かけるのだ」という高揚した気分にさせてくれます。各車両の入口では客室乗務員が出迎えてくれます。乗務員にチケットを見せ、車内へ入ります。

ナイトジェットの普通寝台は1~3人部屋になっていて、プライベートな空間を望むなら、1人用と指定して予約をしましょう。2〜3人部屋を予約した場合は、他の旅行者と相部屋になる可能性があります。日本人には少々慣れないところもあるかもしれませんが、男女で部屋分けがされる点は安心です。客室乗務員は、乗車後に車内の説明と翌日の朝食メニューを確認し、チケットを回収します。ユーレイルグローバルパスなどの鉄道パスを使う際は、この時点で、鉄道パスの確認をしてもらいます。

Photo by 橋爪智之:ナイトジェットの普通寝台(2人部屋としての利用時)

列車はゆっくりとウィーン中央駅を離れ、次のウィーン・マイドリンク駅で乗客を拾うと、すぐに高速新線へ入ります。夜汽車が在来線をゆっくり走る…というのは過去の時代の話。ナイトジェットは時速200kmの快速で暗闇の中を駆け抜けていきます。途中、在来線を走行する区間もありますが、オーストリア連邦鉄道の高速列車レイルジェットとほとんど遜色ないスピードで走り、リンツにはわずか1時間20分で到着。ここから先、しばらくは高速新線がないため、在来線をのんびり走ります。そのため車窓に見える夜景も、これまでと打って変わってスローペースに見えます。

リンツ駅を出発し1時間15分掛けて、オーストリア最後の停車駅ザルツブルクに到着。ここでも数名の乗客を拾うとすぐに発車、ザルツァッハ川の支流ザーラッハ川を超え、ドイツ国内へ入ります。この区間は、日中であれば車窓からは美しい山並みの景色を楽しむことができますが、夜行での移動のため、車窓は真っ暗闇では何も見えません。時折通過する小さな駅の駅名標が、オーストリアからドイツへ入ったことを教えてくれます。途中、クーフシュタイン、インスブルック方面への分岐点となるローゼンハイムに停車しますが、ほとんど乗降客もなくすぐに発車。列車は暗闇の中を走り続けていきます。

ミュンヘンが実質的な最後の乗車可能駅

やがて車窓に建物の灯りの数が増えてくると、ミュンヘン南駅に到着します。時刻はちょうど日が変わる頃。このナイトジェットを利用すれば、ミュンヘンを深夜に発ち、翌朝にはパリに到着できますので、時間を無駄にしたくない方には効率的な移動手段と言えます。乗車までゆっくり食事をしたり、あるいは友人たちとたっぷりお酒を楽しんだりと、ミュンヘンの夜を堪能した後でも十分間に合う時間です。ただし、注意が必要なのは、この列車はミュンヘン中央駅へ立ち寄らないということで、南駅に停車した後はそのままミュンヘンを離れていきます。ミュンヘン中央駅を経由しないのは、中央駅は頭端式ターミナルなので、機関車の繋げ換えが必要になります。そのため、時間のロスをなるべく減らす目的のためかもしれません。
ミュンヘンが実質的な最後の乗車可能駅で、ミュンヘン南駅を発車した列車は、午前3時30分に到着するカールスルーエまで止まりません。ミュンヘンからアウグスブルクへかけては、在来線ながら線路が改良された区間で、列車は再び時速200kmまで速度を上げて走行します。少々走行音は気になりますが、大きな揺れはなく、睡眠に影響があるほどではありません

終着駅フランスの首都パリへ

Photo by 橋爪智之:カールスルーエ駅でフランス国内用の機関車へ交替をする

列車が停車する気配で目を覚まし、窓の外を覗いてみると、カールスルーエに到着しています。時刻は午前3時30分、定刻での到着。この先、フランス方面へ入るため、ウィーンからこの列車を牽引してきた機関車から、フランス国内用の機関車へ交替となります。時間調整も含め、ここで約40分停車。午前4時11分、定刻にカールスルーエを発車し、すぐにフランス国内へと入る。面白いもので、大して距離は離れていないはずなのに、建物など目に入ってくる風景は紛れもなくフランスそのもの。移動しながら、車窓の変化を直接感じられるのが、鉄道旅行の大きな魅力の一つです。
次のストラスブールには明け方の5時ごろに到着します。実はここでTGVに乗り換えると、約1時間パリへ早く到着できますが、実はTGVを利用する場合は、ストラスブール駅で1時間以上待たなければなりません。TGVの早さを実感できますが、用事がないならわざわざ乗り換えないで、このままゆっくりパリを目指すのがおすすめです。

Photo by 橋爪智之:ナイトジェットで提供される朝食

ストラスブールが最後の停車駅で、次は終点のパリ。列車の速度は再び低くなり、時速120~130km程度で走ります。午前8時過ぎには、客室乗務員にお願いしていた朝食を用意してもらい、外の景色をぼんやり眺めながら食べることができます。フランスは農業国だけあって、外に見える景色の多くは田園風景です。すれ違う列車の本数が増え、民家の数が車窓のあっちこっちに見られるようになるとパリも近いです。その民家がやがて高層の建物となり、線路の本数がドンドン増えていくと、そのままフランス東部やスイス・ドイツ方面の列車が発着するパリ東駅に到着します。

ドイツ、オーストリア方面からのパリ側の玄関駅であるパリ東駅

快適な夜行列車の旅をナイトジェットで

Photo by 橋爪智之:パリ東駅はフランス東部方面のTGVの発着駅でもある

ウィーン~パリ間のナイトジェットは、2022年3月現在のダイヤで、ウィーン中央駅発は月曜日、木曜日、土曜日の運行で、パリ東駅発は火曜日、金曜日、日曜日の週3便の運行となります。日本ではなかなか経験できない夜行列車の旅。列車で隣国まで移動ができるのはヨーロッパ旅行ならではだと思います。夜行列車で移動も楽しみながら効率よくヨーロッパ旅行を満喫してみてはいかがでしょうか。

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橋爪 智之(はしづめ ともゆき)
EXSENSES公式ライター

欧州鉄道フォトライター
1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住

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