神戸市立森林植物園で見つけよう
小さな「春」

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神戸森林植物園で見られるバイカオウレン
早春に「梅」に似た形の花を咲かせる「バイカオウレン」。(写真:2月中旬撮影)

ひんやりと寒い日を挟みながらも、春らしい陽気が日々増してくる、冬と春の間の時期。季節は前後しつつ、一歩一歩と、たしかに春へと向かっています。
今回ご紹介する「神戸市立森林植物園」では、木々や花がさまざまな形で春の訪れを伝えています。
植物たちがいち早く告げる小さな「春」を見つけに出かけてみませんか。

「神戸市立森林植物園」どんなところ?

移ろう季節を感じられる植物園

神戸森林植物園で見られる野鳥

神戸市立森林植物園は、神戸の街を抱くようにそびえる六甲山地の一角にある植物園。1940年の起工で、80年以上もの長い歴史を持ちます。
神戸市街地から車で30分ほどの距離にありながら、入口の門をくぐれば、142.6ヘクタール(東京ドーム約30個分)もの広大な敷地に、生き生きとした豊かな自然があふれ、鳥たちがさえずり、ゆったりとした時間が流れます。園内では、日本国内から世界各地の樹木まで、約1200種の植物が生育。春には桜、初夏にはあじさい、秋には紅葉といった大きな見どころから、それらの間で移ろう小さな季節まで、一年を通じて自然界の季節の巡りを観察・体感できる場所です。

最寄駅から無料の送迎バスも走っており、公共交通機関でのアクセスも可能です。

世界の森を歩く

神戸森林植物園で見学できるジャイアントセコイア
世界一の巨木「ジャイアントセコイア」の輪切り。写真提供:神戸市立森林植物園

神戸市立森林植物園では、日本をふくめ、世界各国の樹木を、原産地別にエリア分けして植栽・展示しています。また、神戸市と海外の姉妹都市・友好都市との提携を記念してつくられた「国際親善の森」エリアは、各都市の国原産の樹木とモニュメントがあり、異国情緒を感じる場所です。
森の静けさの中、アジアからヨーロッパ、アメリカまで、エリアをまたぐごとに雰囲気の変わる樹林を歩いていると、まるで世界中の森を散策しているようです。

「森林展示館」に展示されている、「ジャイアントセコイア」(セコイアオスギ)の輪切りも、見どころ。推定樹齢2000年ものこの木は、アメリカ・カリフォルニア州の保護林で自然倒木したものが、輪切りに切り出され、運ばれてきたもの。日本から遠く離れた森に生き、「世界最大の樹木」ともいわれるジャイアントセコイアの圧巻の姿を、間近に見ることができます。

「園内散策会」で教わる 植物との出会い方

神戸市立森林植物園では、ボランティアや職員による「園内散策会」を定期的に行なっています。ガイドの方に園内を案内していただくと、知らなければ横をすっと通り過ぎてしまうような植物たちの新たな一面に、気づかせてもらえます。
また、年間を通じて、季節の折々に「観察会」などのイベントも行われています。
2月〜3月にかけては、春の訪れを体感する「春来祭」が開催されています(2023年は、2月4日〜3月26日)。

春を告げる植物たち

季節ごとに植物たちのいろいろな魅力を見せてくれる植物園。ここからは、冬から春へと向かっていく時期にかけて、園内で出会える「春」の植物を紹介します。一見すると樹木の葉は落ち、草花も花を落とし、見どころが分かりにくい時期かもしれません。けれど、観察するポイントを知ると、足元から頭上まで、植物たちの生き生きとした姿に出会うことができます。

春一番に「まず咲く」―マンサクの木

神戸森林植物園に植えられているオオバマンサクの木
葉を落とした木々の間に目を凝らすと・・・。(写真:オオバマンサク/2月上旬撮影)

頭上を見上げると、葉を落とした木々に混じって、リボン状の黄色い花を咲かせる木があります。春にいち早く花を咲かせる木として知られる「オオバマンサク」です。マンサクは、その開花状況が天気予報で報じられるなど、春の訪れのメーターにもなります。その名前の由来も、「まず咲く」という言葉が訛って「マンサク」となったという説があるほどです。

「春の妖精」―スプリング・エフェメラル

足元を見てみると、寒さの中でも、地中から可憐な花々がひょっこりと顔を出しています。これらの花は、一年の大半を地中で過ごし、早春に花を咲かせることから、「春の妖精」や「スプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral)」(英語で「春の儚い命」という意味)のよび名を持ちます。
神戸市立森林植物園では、これらの花を一箇所にまとめて展示しており(「ロックガーデン」)、一度にさまざまな種類の「春の妖精」たちに出会うことができます。
次は、その一例です。

●フクジュソウ

神戸森林植物園で見られるフクジュソウ
(写真:2月中旬撮影)

早春に黄金色の花を咲かせるフクジュソウは、春一番を告げる代表の花。江戸時代の頃は、旧暦の正月(2月頃)に咲きだすことから、おめでたいという意味も込めて、「福告げ草」という名が使われていたそうです。現在の名前に使われている「寿」という字には、開花時期が長いことになぞられた「長寿」の意もあります。
まさに春を祝うような黄金の色と、地面の落ち葉とのコントラストが、冬から春への移ろいを感じさせます。

●セツブンソウ

神戸森林植物園で見られるセツブンソウ
(写真:2月中旬撮影)

その名の通り、節分の時期に咲く春の花。落ち葉の間からまっすぐのびる、みずみずしい白色の可憐な花からは、儚さと力強さを感じます。

園内のカフェでひと休み

神戸森林植物園内のカフェメニュー
新鮮野菜とチーズのサンドセット(3月下旬から販売予定※写真はイメージ) 写真提供:神戸市立森林植物園

広い園内を散策する合間には、カフェでひと休みすることもできます。「カフェ ル・ピック」では、近隣の牧場でつくられる新鮮な乳製品を生かしたオリジナルメニューなどを提供しています。搾りたての牛乳を使用したソフトクリームも人気です。

また、カフェに隣接する雑貨屋では、森の温もりを感じる雑貨をはじめ、家庭でも育てられる植物や、神戸土産なども販売しています。

「十人十色」の冬芽の世界

樹木は、桜のように花を咲かせていたり、紅葉の時期のように葉が色づいていたりする時期が見頃として注目されますが、芽吹く前にも楽しみ方があります。
その一つが、「冬芽」の観察です。春に向かい枝先でぷっくりと膨らむ芽は、じつは木によって姿・形が個性豊か。神戸市立森林植物園では、いろいろな種類の木の冬芽を観察することができます。
次は、その一例です。

●オニグルミ

神戸森林植物園で見られるオニグルミ
(写真:2月中旬撮影)

ごつごつした芽。枝の先に、複数の芽がらせん状についています。その下にある葉っぱの落ちた痕が、羊の顔のように見えます。

●チドリノキ

神戸森林植物園で見られるチドリノキ
(写真:2月中旬撮影)

双子のようにそっくりな2つの芽が、枝の先にペアで並んでいます。魚のうろこのように皮が重なっていて、寒さに耐えるための重ね着をしているようにも見えます。

●ハクモクレン

神戸森林植物園で見られるハクモクレン
(写真:2月中旬撮影)

ふかふかの暖かいコートを着たような冬芽。大きな芽が小さな芽をおんぶしているようにも見えます。大きな芽が虫や鳥に食べられたり傷つけられたりして成長できなかった場合、小さな芽が代わりとなってのびていきます。

季節の動きを感じに

冬から春に向かっていく時期は、季節の動きをひときわ感じられる時期として、植物園を訪れるのにおすすめです。さまざまな種類の樹木・花を一度に見ることのできる植物園で春を観察する視点を得ると、日常で目にする植物からも、春を感じとる機会が増えるかもしれません。
季節が進めば、今度は芽吹きの季節。訪れるたびに植物たちの変化を見ることができるのも、植物園の魅力です。神戸市立森林植物園のホームページでは、開花情報を随時更新しているので、訪れる際にはぜひご確認ください。

神戸市立森林植物園
078-591-0253
09:00〜17:00(入園は16時30分まで)※季節により延長あり
毎週水曜日(祝日の場合は翌日)、12月29日〜1月3日
※お出掛けの際には、必ず最新情報を施設の公式ウェブサイトでご確認いただくか、施設にお問い合わせください。

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佐部利 瞳
EXSENSES公式ライター

佐部利 瞳(さぶり ひとみ)
兵庫県在住のフリーライター。東北で生まれ育ち、大学時代に初めて暮らした関西が今では大好き。兵庫県で出会った、素敵な場所・人・コトをシェアしていきたいです。

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