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日用品の枠を超えて美術工芸品へ
複雑で繊細な美しさを持つ別府竹細工

別府竹細工は長い歴史を持つ、全国でも屈指の竹工芸品です。竹製品といえば籠やザルといった日用品を思い浮かべますが、昭和42年に生野祥雲斎が竹工芸で初めて人間国宝に認定され、その高度な技術と芸術性が認められたのです。他にも海外で個展を開催する作家や、ニューヨークのメトロポリタン美術館が作品を購入するなど、優れた作家を輩出しており、近代は美術工芸品としての側面も大きくなってきました。今回は竹細工とともに別府竹細工を詳しく見ていきましょう。

竹細工とは

写真提供:公益社団法人ツーリズムおおいた

竹細工とは竹を切って加工したものや、細かくした竹ひごを編んだり組み合わせたりして作ったものです。籠やザルなどの日用品や箕(ミ)と呼ばれる農具・竹とんぼや竹馬などのおもちゃなどがあります。日本は良質な竹に恵まれており、素材として加工しやすく、しなやかで丈夫なため古代から様々なものが作られてきました。

竹細工の歴史

竹は古くから身近な素材として加工され、日用品や農具・漁具など様々に使われてきました。縄文時代の遺跡にはすでに竹を編んで作った器が発見されており、日本人の歴史とともに歩んできたことが伺えます。竹は日本全国の多くの地域で生育しているため、各地で竹を加工した特色のある工芸品が作られてきたのです。なかでも全国で生産される茶筅の約90パーセントを占める奈良県の「高山茶筅」、丸い竹ひごを使用する静岡県の「駿河竹千筋細工」、素朴な日用品の岡山県の「勝山竹細工」、今回ご紹介する大分県の「別府竹細工」などが伝統的工芸品に指定されています。

大分県の竹細工

写真提供:公益社団法人ツーリズムおおいた

大分県は真竹の生産量が国内シェア30%以上と全国1位です。豊富な資源を背景に別府では1世紀ごろからすでに竹で編んだ籠やザルを使用していたと言われています。

4世紀ごろ、時の天皇が、南九州の反政権勢力討伐の帰りに別府に立ち寄った際、茶碗籠を作ったのが別府竹細工の起源とされています。室町時代には行商用の籠が生産されるようになり、江戸時代に入ると別府は温泉地として名が知られ、全国から湯治客が集まりました。湯治客が滞在中に使用した竹製の飯籠や米あげざる、豆腐籠などがお土産としても人気になり多数生産されるようになりました。その後、別府には財界人や文化人の別荘が多く建てられ、竹製の茶道具や美術品の需要が高まります。

この頃から別府竹細工の特徴である「編組」の技法が発展し、造形性を高めた作家が美術工芸品を生み出すようになりました。籠やザルなどの日用品としての竹工芸品とインテリア用品や花籠などの美術工芸品の2つの流れができたのです。今もなお、伝統的な技術を受け継ぎながら、現代の生活に合わせた作品や美術工芸品が生み出されています。また、県が主体となって100年以上前から竹細工職人の育成に励んできました。特に日本唯一の竹工芸の訓練校「大分県立竹工芸訓練センター」が設置されています。竹工芸産業の後継者を育成するために2年間の職業訓練を行っており、将来、竹細工職人を目指す人が全国から集まっています。

別府竹細工とは

別府竹細工は大分県で唯一の経済産業大臣の指定を受けた「伝統的工芸品」です。別府市を中心とした大分県内で生育された真竹を使って製作されています。竹ひごを編み上げる「編組」という技法を使うのが特徴で、全工程が手作業で作られています。真竹は弾力に富むため編み込むのに適した竹素材です。
編組には「四つ目編み」「六つ目編み」「八つ目編み」「網代編み」「ござ目編み」「松葉編み」「菊底編み」「輪弧編み」の8つの基本の編み方があります。この基本の編み方をそれぞれアレンジして200を超える編み方が生み出されてきました。例えば、「六つ目編み」をアレンジしたのが「亀甲編み」です。さらにそれぞれの編み方を組み合わせることで、複雑な表現が可能なのです。

別府竹細工の製作工程

写真提供:公益社団法人ツーリズムおおいた

別府竹細工の製作は竹から竹ひごを作る工程と、出来上がった竹ひごを編んでいく大きく2つの工程から構成されています。

【伐採・油抜き】

竹林から竹細工に適した3〜4年物の竹を伐採します。その際、竹の表面の傷を最小限にするために肩に担ぎながらゆっくりと倒します。伐採した竹は苛性ソーダを入れた熱湯の中で15分ほど煮立て、竹の表目に浮き出た油分をふき取ります。

【天日乾燥】

油抜きした竹は1ヵ月ほど天日で乾燥させると、淡い黄色味のある白色、いわゆる象牙色に変化し、表面に光沢が出て材質も堅く丈夫になります。竹細工職人はこの状態の物を加工して別府竹細工を製作します。

【切断加工・荒割り】

作る作品に合わせて竹を切断し、竹割包丁で縦に半分に割り、さらに半分と「粗割り」の作業を繰り返し行います。徐々に竹を細くして作りたい竹ひごの幅に近づけていきます。

【剥ぎ】

竹細工には皮の部分だけを使用するため、「荒剥ぎ」、「小割り」、「薄剥ぎ」と何回にも分けて剥ぎと割りの工程を繰り返し、編みやすい柔らかい竹ひごを作ります。

【竹ひごの仕上げ】

「すき銑」という道具で厚さを揃え、「巾取り」という道具で幅を揃えていきます。次に刃物の向きを変えて竹の角を取る面取り作業をします。この面取りは出来上がった製品がきれいに見えるかどうかが決まる大事な工程です。刃物の角度によって柔らかさや力強さなど表情の異なる作品に仕上がります。出来上がりは1ミリにも満たない竹ひごになります。

【底編み】

籠は基本的に底から編んでいきます。亀甲編みなどで編んだ底の部分を2つの輪弧編みで挟んで固定し、底を固定したら胴編みへと立体的に編むために腰を立ち上げます。

【胴編み・首編み】

立ち上げた竹ひごを立体に編んでいきます。複雑に絡み合った竹ひごを交差させながら、一周ごとに形を整え、途中で霧吹きで水をかけて竹ひごが滑らないようにして編み進めます。

【縁仕上げ・取り付け仕上げ】

最後に作品のフチを仕上げます。この仕上げの方法も幾種類もあるので、作品に合わせて仕上げます。塗装をしない作品はこの工程で完成です。

【塗装加工】

作品に塗装をする場合は竹ひごを作る際にあらかじめ表面のガラス質を削る「磨き」の工程を行ってから編み上げます。塗装は染料を溶かした湯に浸けて行い、塗装が終わったらしっかりと乾燥させます。続いて編組の盛り上がっている部分の竹ひごを磨く「研ぎ出し」の工程を経て完成です。作品によっては生漆を塗ることもあります。

日常生活に竹工芸品を取り入れてみませんか

竹工芸品はザルやカトラリーなどの日用品だけでなく、照明や多目的に使える籠など和の素材ながら現代のインテリアにも優しくなじみます。生活のなかに竹工芸品を取り入れて自然素材の持つ柔らかい雰囲気で癒されてみませんか。

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