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サグラダ・ファミリアの工事がコロナの影響で中断したのはスペイン市民戦争(1936年から1939年)以来のことでした。2020年春から2021年1月までの11ヶ月間クレーンは止まったままでした。工事が進んでいくに従って日々変わっていくサグラダ・ファミリアの姿を見ることができるようになったのは、日常が戻りつつあることを感じさせる大きなできごとでした。今回はサグラダ・ファミリアの歴史と見どころ、そして遅れていた工事の状況を現地からお伝えします。
サグラダ・ファミリアとは
スペインのバルセロナにあるカトリック教会のバシリカであり、日本語で聖家族という意味を持ち、それはイエス・キリスト、聖母マリア、養父ヨセフのことを指します。建築家アントニ・ガウディの未完作品で世界遺産。1882年に着工し、今年140周年を迎えます。2026年に完成予定となっています。
サグラダ・ファミリアが建設されるまで
19世紀末書店を営みながら聖ヨセフ信徒協会の会長を務めていたジュセップ·マリア·ボカベージャはバルセロナの街に聖家族を奉る教会を作りたいと決意します。彼が土地を買うために貯金をし、さらに寄付を募りやっと購入することができたのは街の中心部からは外れた場所でした。その時代のバルセロナは産業革命により経済的に繁栄し活発な文化都市になりつつありました。そのような時代背景からサグラダ・ファミリアのような新しい芸術プロジェクトが受け入れられたのです。そしてサグラダ・ファミリアは1882年3月19日聖ヨセフの祝日(この日はスペインの父の日)に着工されました。最初に設計を引き受けたのは司教区づきのエルビジャールという建築家でしたが、教会側と建築資材のことで意見の相違があり、辞任。その後1883年に優れた才能で頭角を現し始めたガウディが抜擢されます。そして唯一無二の世界的な大作へと作り変えられていくのです。
サグラダ・ファミリアといえばココ!
ここからはサグラダ・ファミリアへ行ったら絶対に訪れるべき見どころスポットをご紹介します。
生誕のファサード
ガウディはサグラダ・ファミリアを建設するにあたり、バルセロナ市民に受け入れてもらうためイエスの誕生の喜び、愛、希望にあふれ、またイエスの人間的で家庭的な側面を表す生誕の門を初めに建築することにしました。聖母マリアの受胎告知からイエスの少年時代が石の彫刻で表現され、全体的に見事な調和を見せています。ガウディの持つ知識、才能のすべてを駆使して造られた石のバイブルとも言えるでしょう。また親しみやすい雰囲気を出すために見る人達が身近に感じる動物や植物、家財道具などがモチーフとして使われています。
生誕のファサードは3つの門で構成されていています。イエスに捧げられるのが中央の最も高い門、愛徳の門で、右側は聖母マリアに捧げられた信仰の門、左側は聖ヨセフに捧げられる希望の門です。希望の門の柱を支える海側は海ガメの彫刻、信仰の門の柱を支える山側は陸ガメの彫刻にも注目してください。
愛徳の門の上部右側にはオリジナルが市民戦争で破壊されたために、後に日本人彫刻家外尾悦郎氏が制作した15体の天使の像があります。また愛徳の門の銅板も外尾氏が制作したもので、無数の植物と昆虫などの小さな生き物で覆われた扉はイエスが生まれた大地を表現しています。
受難のファサード
1986年に受難のファサードは知的で現代的な彫刻家として知られるジュセップ·マリア·スビラックスに依頼されました。このファサードは1911年にガウディが病で死の淵から生還した苦しい体験を経て、イエスの死への過程を表現しようとしたデッサンを元に造られています。喜びと愛に溢れた生誕のファサードとは真逆の冷たく悲しい印象を与え、人々はそのコントラストに強い衝撃を受けるのです。ガウディがこのファサードを生誕のファサードの後に作った理由がよくわかります。
教会の西側に造られた受難のファサードはその名のとおり最後の晩餐、ユダのキス、イエスの裁判、鞭打ちの刑、十字架磔刑、埋葬と続くのです。そのイエスの生涯の最後に日々を表す彫刻と共に聖書にまつわる多くのモチーフが散りばめられています。
栄光のファサード
サグラダ・ファミリアの正面玄関である栄光のファサードで完成後は最も重要な門とされています。栄光のファサードは教会の南側に位置します。ガウディが残した模型を元に、人類の歴史とキリスト教の教義が具体化されていきます。教会に足を踏み入れる前にこのファサードを通ることにより、永遠の生を得るまでの長い道のりを意識し、神の存在と御言葉を信じる気持ちを高めることを目的としています。ガウディの構想に従って工事が進んでいけば7本の柱と7つの扉が作られます。柱の土台は7つの大罪、柱頭は7つの徳、7つの扉は洗礼、終油、叙階、聖体、堅信、婚姻、贖罪を表すものになるそうです。最も重要な栄光のファサードの完成にたくさんの人が大きな期待を抱いていることでしょう。
教会内部
サグラダ・ファミリアの教会内部に入ると圧倒的な美しさにほとんどの人は声を失います。朝の時間帯もいいですが、特に晴れた日の夕方にステンドグラスから差し込む光に包まれると得も言われぬ安らかな厳かな気持ちになります。太さが様々な柱は森のようで、その木漏れ日の中にいると自然を心から愛したガウディの思いが伝わってくるようです。着席できる椅子がありますので時間があれば瞑想をしたいものです。
聖母マリアの塔がついに完成!
2021年12月8日、18本の尖塔の中で2番めに高いマリアの塔が完成しました。その高さ138m、重さ5.5トンの立体的な星が初めて点灯されたときには集まった観客たちから大きなどよめきが起こりました。そしてローマ法王からはこのマリアの塔の星がすべての人を照らしますようにというメッセージが贈られました。今年中には福音者ルカ、福音者マルコの塔が完成し、更に172mの高さになるイエスの塔も3段積み上げることが予定されています。
サグラダ・ファミリアはガウディの生誕200年となる2026年に完成を予定していましたが、長きに渡り工事が中断したことや、入場料の収益や寄付が減ったことによる資金問題もあり現時点では2026年の完成には間に合わない可能性もでてきています。
観光客が戻りつつあるバルセロナ
かつては1年間にバルセロナを訪れる観光客は400万人、サグラダ・ファミリアには
1日1万3000人から1万5000人が訪れていました。今はまだ以前のようではないですが、ほとんどすべての店がオープンし、国内や近隣諸国からの観光客も増えてきています。サグラダ・ファミリアを眺めながらカクテルを飲める店、素敵なお土産屋さんなども営業していました。観光客が戻りつつあるバルセロナはお客様を受け入れる準備ができており、以前のような賑わいを見せる日はそう遠くないのかもしれません。
旅行が再開した際には着々と完成しつつあるサグラダ・ファミリアへぜひ足を運んでみてください。
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