レマン湖畔の春を告げる花畑
「5月の雪」ナルシスと出合うハイキング

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スイスのナルシスの花畑
5月下旬にレ・プレイヤードのひと駅下のラリー駅(Lally)周辺で見られたナルシスの花畑

スイスとフランスにまたがるレマン湖畔のリゾート地モントルーの近くには、真っ白な花を咲かせる「ナルシス」の群生地があります。一斉に開花するとまるで雪が降ったかのように、一面を白いお花畑に変えます。いつ、どこでこの花畑に出合えるのかをご紹介します。

ナルシスってどんな花?

レマン湖地方の山に咲くスイセンの仲間

スイスのレマン湖湖畔に咲くナルシスの花
レマン湖畔のナルシスには2種類の花がある

ナルシスの花はレマン湖畔の町、モントルーとヴヴェイの背後の山に群生しています。標高1000mから1500mのエリアに一斉に咲いて地面を白い絨毯に変えるため、「5月の雪」と呼ばれ親しまれてきました。日本のスイセンとは同属ですが、種類は異なります。

お祭りも開かれていた観光の目玉

スイスの高原にあるナルシスの花畑
ナルシスはかなりの急斜面にも生えている

ナルシス観光の歴史は古く、1897年から1957年までは「ナルシス・フェスティバル(Fete des Narcisses)」が行なわれていました。バレエ芸術の発展に大きく貢献したディアギレフ率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)が公演を行なったり、花の山車が出るパレードが行なわれたりと、おおがかりなイベントが開催されていました。

スイスの牧草風景
5月下旬は標高の高い牧草地がナルシスの花で覆われていた

近年は農業の機械化の影響や生育環境の変化により、群生地が急激に減少し絶滅の危機が心配されていました。1999年に保護プロジェクトが立ち上げられ、現在は複数のポイントで群生を見ることができます。

ナルシスのお花畑は、いつ、どこで見られるの?

開花シーズンは4月下旬から6月上旬

ナルシスの花畑
ナルシスは香りも楽しむことができる花だ

ナルシスの花はその年の気候条件によって開花時期が前後します。気温や日照時間などの影響を受けると言われています。短期間しか訪問できない人は、満開の花畑を見るのが難しそうに思われるかもしれませんが、心配ありません。

スイスのナルシスの花畑
場所によっては、春の野草と混じってナルシスの群生が見られる

ナルシスの群生ポイントは数か所あり、標高が異なる場所に点在しています。シーズン初めは標高の低い場所から開花していき、日々の気温が上がるにつれ、ナルシスが開花するエリアの標高は高くなっていきます。5月上旬であれば標高の低いエリアを、5月下旬ならば標高の高いエリアを探すと、ナルシスの群生を見られるチャンスがあります。ナルシス観光の情報サイトでは、日本の桜予報のようにナルシスの開花状況を確認できますので、訪問直前にチェックしておきましょう。

おすすめの訪問ポイントはここ!

レ・プレイヤード(Les Pléiades)

スイスのレ・プレイヤードの花畑
標高が高いのでシーズン後半にナルシスの開花が見られる。写真は6月上旬

麓の町ヴヴェイ(Vevey)から鉄道を使い、ブロネー(Blonay)を経由して38分でアクセスできる展望台です。ナルシスの群生は山腹から山頂にかけて見ることができます。アクセスが楽で、沿線に群生ポイントがあるので、まずはここを目指すといいでしょう。満開の時期は車窓にも「5月の雪」の景色が広がります。

スイスの鉄道から見えるナルシスの花畑
ナルシスのお花畑は車窓からも見ることができる

駅裏手の丘の展望ポイントからは周囲の山々とレマン湖を見渡すことができ、パノラマの景色が楽しめます。観光局が設定しているハイキングルートは、ひと駅下のラリーから徒歩10分ほどの位置にあるレストランRestaurant le 1209を起点とする約5㎞のコースで、所要時間1時間30分から2時間ほどです。レ・プレイヤードの山頂付近にもハイキングルートがあるので、ルートを外れないように自由に歩き回るのもおすすめです。

レ・プレイヤード周辺の線路沿いに咲くナルシス
時間に余裕がなければ、線路沿いにハイキングしながらお花畑の景色を楽しむといい

レザヴァン(Les Avants)

スイスのレザヴァンにあるナルシスの花畑
黄色のお花畑とナルシスのお花畑とを同時に見ることができた

レザヴァンはモントルーから電車で約20分、標高約1000mに位置している歴史あるスキーリゾートです。

スイスのレザヴァンのハイキングルートに見られる町並み
鉄道駅からケーブルカーを使って山の上に上ることもできる

ナルシスの花畑を楽しむハイキングルートは駅前からスタートし、距離は約5.3㎞。所要1時間50分から2時間30分ほどです。最初に200mくらい登りますが、ケーブルカーを使ってショートカットすることも可能です。

ナルシス観光とともに楽しみたいポイントは?

クイーンのスタジオがあった町、モントルー

モントルーにあるフレディ・マーキュリー像
湖畔に行けばフレディ・マーキュリーの銅像が迎えてくれる

モントルーはイギリスのロックバンド「クイーン」のスタジオがあったリゾート地です。

スイスのモントルーのカジノに再現されたクイーンのスタジオ
クイーンの楽曲制作の熱量が伝わる展示がみられる

現在はカジノの中にスタジオを再現したスペース「Queen Studio Experience Montreux」が作られ、彼らの足跡や実際に使われていた衣装、機材などを見学することができます。スタジオのセットもあり、各パートの音量バランスを変えるミキシング操作を体験することもできます。

レマン湖に浮かぶ船とシヨン城
レマン湖の町を結ぶ湖船で周遊するのもオススメ!

モントルー近くの見どころとして外せないのは、イギリスの詩人バイロンが書いた『シヨン城の囚人』の舞台、シヨン城です。湖に突き出す岩盤の上に建てられたサヴォワ公の居城で、広い城内をじっくりと見学できます。地下牢だった場所の柱にはバイロン直筆の名前が彫られています。

マナーを守りハイキングを楽しみましょう

ナルシスが生えている場所は私有地もあれば、公共の場もあります。ナルシスはひと握りだけ摘むことが許可されていますが、私有地の花を摘むことは禁止されています。また花の上に寝ころがったり、密集して生えている場所を歩くことも避けましょう。ナルシスが群生する景色は、想像を超えるボリュームがあり、あたりは花の香りに満たされています。開花シーズンにレマン湖エリアを訪問するチャンスがあれば、ぜひ「5月の雪」の絶景を楽しんでみてください。

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小山田浩明(おやまだ ひろあき)
EXSENSES公式ライター

フリーランスのフォトグラファー。会社員時代は、海外旅行ガイドブック編集部で52カ国を担当。特に北欧、スイス、オーストラリアの取材経験が豊富。

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