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ルッツと呼ばれる美しい船に乗る漁師を主人公に、伝統と近代化の間で生じる葛藤を描いた映画『ルッツ 海に生きる』が6月24日から東京を皮切りに、全国で順次公開されます。色鮮やかな伝統漁船で彩られた漁港、ハチミツ色に輝く街並みといった美しい光景が幾度となく登場し、リゾート地としても知られるマルタへと旅情をそそられます。では、物語の背景、撮影秘話に触れながら映画の見どころを探っていきましょう。
美しい光景を舞台に繰り広げられる人間ドラマ
舞台は、地中海のほぼ真ん中に浮かぶ島国マルタ。曾祖父の代から受け継いだ、伝統の木造漁船ルッツで漁をするひとりの若者がいました。家族を養うため自身の象徴でもあるルッツを捨てるか、それとも共に生きるかで揺れる主人公ジェスマーク。その行方はいかに――。
家族や仲間との絆を大切に、屈託のない笑顔でおしゃべりを楽しむ人々。その一方で現れては消え、現れては消えるやるせなさと怒り。さまざまな場面や感情が交錯するなか、マルタの美しい光景がひとりの若者の苦悩を映し出し、そしてそのすべてを包み込んでいます。
物語の舞台となったマルタとは?
物語の舞台でもあり、撮影地でもあるマルタは、マルタ島、ゴゾ島、コミノ島、さらにいくつかの小島からなる総面積316㎢ほどの小さな国。ヨーロッパ屈指のリゾート地としても知られ、どこを切り取っても絵はがきのような美しい光景が人々を魅了しています。
その美しい景観から、これまでにも多くの映画が撮影されてきましたが、マルタを舞台にしたマルタ製作の映画が日本で劇場公開されるのは今回が初めて。先に公開されたヨーロッパに続き、日本でも多くの人々を惹きつけそうです。
長年、漁師たちを見守ってきた“ルッツ”
映画のタイトルでもあるルッツとは、赤、黄、青、緑などに彩られたマルタならではの伝統的な木造船のこと。映画の中で漁師仲間のデイヴィッドが「船を失えば、進むべき道が見えなくなる」と語るように、この地で代々漁を続ける人々にとっては、まさに自身の誇りと生き方を象徴するような存在です。
カラフルな船体のなかでもひときわ目を引くのが、船首に描かれた一対の目。「オシリスの目」と呼ばれる、古代フェニキア人によって伝えられたもので、昔から航海中の漁師たちを悪天候や不漁から守る“魔除け”として信じられています。スクリーンの中でも、何かを暗示するかのようにたびたび登場するのが印象的です。
出演はなんと、実存の漁師たち!
今回、主演を務めたジェスマーク・シクルーナは、なんと今もマルタでルッツを操る実存の漁師。南部の小さな漁村アール・ラプシで漁をしていた際に監督らの目にとまり、主役に抜擢されました。そのリアリズムに満ちた演技は多くの人々を惹きつけ、サンダンス映画祭ではワールドシネマ・ドラマティック部門で俳優賞を受賞しています。
さらに、親友で漁師仲間役のデイヴィッド・シクルーナはジェスマークの従兄で、こちらも現役の漁師。場面のところどころで登場する漁師たちも皆地元の人々で、南部なまりのマルタ語がより現実感を引き立てています。
監督はマルタ出身のアメリカ人、アレックス・カミレーリ。1988年生まれの若き監督で、今回が長編監督デビューとなりました。インスピレーションの源となったというルキーノ・ヴィスコンティ作の『揺れる大地』と同様、観客に現実と予期せぬものとを同時に見せる見事な映画へと仕上げています。本作について、下記のコメントを寄せています。
「ジェスマークはある意味で(苦しみから)解放されましたが、しかし変革は常にほろ苦いもので、何かを失うことが避けられません。(中略)今、私は33歳ですが、大人になるということを、いまだに未知の存在のように感じています。どうすれば、我々は本当の自分になれるのだろう。そして、いつになったらゴールを知ることができるのでしょうか。」
マルタの美しい光景が次々と登場!
映画のおもな撮影地となったのは、マルタ南部の漁村マルサシュロック。国内最大の漁港で、毎週日曜朝に開かれるフィッシュマーケットには、新鮮な魚介を求めて多くの人々が島内全域からやって来ます。湾沿いに約500mにわたってさまざまな露店が軒を連ね、果実やお菓子、衣類などを扱う店も。午前中じっくり買い物を楽しんで、昼食は湾沿いのレストランでおいしい魚介料理を堪能するというのが、定番の楽しみ方です。
映画の冒頭に登場するアール・ラプシは、マルサシュロックから西へ10㎞ほど行ったところにある小さな漁村。監督たちがキャストを探していた際にジェスマークとデイヴィッドに偶然出会った場所でもあり、主演のジェスマークは今もこの村で漁師を続けています。
周辺には、ユネスコの世界遺産にも登録されている謎の巨石神殿、ハジャー・イム神殿とイムナイドラ神殿があり、巨人伝説が残る謎の遺構を目の当たりにすることも。20トンにも及ぶ巨石が積み上げられたゲートや装飾模様が施された祭壇、巨大像が立っていたとされる跡など内部を歩きながら観察することができます。
断崖にぽっかり口を開けたような姿が印象的な青の洞門もすぐ近く。小型ボートに乗って洞門周囲を散策するツアーも出ていて、長年の風と波の浸食によって生み出された大自然の造形美に触れることができます。“青の洞門”という名のとおり、太陽の光の入り具合で水面がさまざまな青色を醸し出す様子は実に神秘的。さまざまな地層を観察しながら船は進み、洞門内部にもしばし滞在します。
映画を通してマルタを旅しよう
映画の撮影地として知られるマルタでは『トロイ』(2004年)、『グラディエーター』(2000年)、『モンテクリスト伯』(2002年)など、数多くの映画が撮影されていますが、実際にマルタを舞台としたマルタ製作の映画としては今回が日本初上陸。太陽の光で煌めく紺碧の海に岩肌を露わにした断崖、そしてハチミツ色に染まった石造りの家々――。美しい景色と情感あふれる音楽とともに、地中海の島国マルタへと誘ってくれます。
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