オーストリアのチョコレート事情

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2月14日が近づくと、日本ではヴァレンタインデーに向けて熱いチョコレート商戦が繰り広げられます。ヴァレンタインデーは、日本では女性から男性へチョコレートを贈る日ですが、オーストリアでは男性が愛する女性へおもに花束などをプレゼントします。花束に添えてチョコレートを贈る人もいるようですが、さほど多くはありません。とはいえ、日本もオーストリアも愛を込めたプレゼントをする日であることは同じ。大切な人へのギフトにおすすめしたい、オーストリアのチョコレートをご紹介します。

オーストリアのおみやげ定番チョコ、モーツァルトクーゲル

大手メーカー、ミラベル社製のモーツァルトクーゲルの断面
© Tourismus Salzburg

オーストリアのチョコレートで最も有名なのは、おそらくモーツァルトクーゲルでしょう。直径2センチぐらいの球形のチョコ菓子で、「モーツァルト玉」という意味です。中心部はピスタチオ風味のマジパン。それをソフトなヌガーで包み、チョコでコーティングしたもので、濃厚でリッチな味わいがあります(メーカーによって多少違いがあります)。

バラエティ豊かなフュルストのチョコレート。トレイのほぼ中心部、球形の銀紙に包まれているのがモーツァルトクーゲル(写真:鈴木眞弓)

このチョコレートが生まれたのはモーツァルトが生まれた町ザルツブルク。菓子職人パウル・フュルストが1890年に考案しました。1905年にはパリの博覧会に出品し、金メダルを受賞して大ヒット。その後、数社が類似のチョコを製造。商標をめぐって法廷論争にまで至るという、日本でも老舗菓子によくあることが起きています。

スーパーに並ぶ袋入りのモーツァルトクーゲル(ミラベル)(写真:鈴木眞弓)

現在もザルツブルクへ行けば、フュルストの店で手作りのモーツァルトクーゲルを購入できます。ザルツブルク以外でも、オーストリア各地のスーパーマーケットで、大手メーカー製のモーツァルトクーゲルが販売されています。ばらまき用のミニパッケージや袋入りから、20~30個入りの大型ボックス入りなどさまざまな種類が用意されている上、価格もオリジナルよりかなり手頃です。もちろん空港売店でも売っています。チョコ選びに迷ったら、まずはモーツァルトクーゲルを押さえておきましょう。

ハプスブルク家の人々に愛されたデメルのお菓子

舌を出した猫がかわいい(写真:鈴木眞弓)

ウィーンの王宮から歩いて1~2分のところに、ハプスブルク家御用達菓子店を誇る老舗デメルがあります。ザッハーと並ぶザッハートルテの名店として世界的に有名ですが、チョコレートや焼き菓子などの魅力的なスイーツを販売しています。貴族の館のような豪華な店内に足を踏み入れると甘い香りに包まれます。

デメルのチョコで特筆すべきは、パッケージのかわいらしさです。猫好きにはたまらない「猫の舌」をモチーフにしたチョコは、その口どけのよさで長い間愛されています。板チョコやボックス入りチョコのパッケージの絵は、20世紀初頭に活躍したウィーン工房のアーティストたちの作品で、バラエティ豊かなアソートチョコが詰まっています。どのパッケージも、食べ終わった後に大切にとっておきたくなります。

デメルは昼過ぎになると、カフェ目当ての人たちで行列ができていることも多いので、チョコレートやスイーツを購入する目的なら、午前中に行くことをおすすめします。

デメル ソリッドチョコ猫ラベル (ミルク/スウィート/ヘーゼルナッツ) 23枚入り

価格:3,640円
(2023/4/5 11:26時点)

Demel(デメル)
+43 (1) 535 17 17 – 0
10:00〜19:00

歴史を感じるショコラティエ、レシャンツ

ハプスブルク家の紋章が輝くレシャンツの店内(写真:鈴木文恵)

ウィーンには個性的なチョコレートショップが数多くあります。地元の人たちが大切な人へのギフトに愛用しているのが、チョコレート専門のショップ、レシャンツです。小さな店内に入ってまず目に飛び込んでくるのが、正面に飾られた金色に輝くハプスブルク家の紋章です。この店はハプスブルク家御用達だったボタン店が閉店後、改装してチョコレート店にしたのです。かつてはボタンが並んでいたという壁面の棚には、今ではチョコレートがしっくりとおさまっています。

チョコレートが並ぶ棚とレシャンツ氏(写真:鈴木文恵)

店主のレシャンツ氏は、ザッハーやデメルで製菓マイスターを務めた実力者。チョコのすべてを知り尽くしています。おみやげにおすすめなのは、ボタンの形をした色とりどりのチョコレート。宝石のように美しく上質な生チョコもクラシックなショーケースに並んでいます。皇妃エリーザベトが好きだったスミレの花の砂糖漬けをあしらったチョコレートもこの店ならではでしょう。

スミレの花の砂糖漬けがトッピングの生チョコレート(写真:鈴木文恵)
LESCHANZ(レシャンツ)
+43(0)-1-533-32-19
月~土 10:00〜18:00

ザッハートルテで世界的に知られるザッハー

生クリームを添えたザッハートルテ(写真:鈴木文恵)

デーメルと並ぶウィーンの2大有名店、ザッハー。世界で最も有名なチョコレートケーキと称されるザッハートルテ発祥の店です。ザッハーで購入できるチョコレート製品は、ザッハートルテとドリンクチョコレート(ココア)だけなのですが、オーストリアのチョコレートを紹介するとき、やはりこの店は欠かせません。
1832年にフランツ・ザッハーが考案したザッハートルテは、しっとり濃厚なチョコスポンジにアプリコットジャムを挟み、表面はしっとりなめらかなチョコ入りグラサージュ(糖衣)をかけてあります。無糖のホイップクリームを添えて、マイルドな甘さにして味わうと絶品です。

ザッハーヴュルフェルは自分用にも欲しくなる(写真:鈴木眞弓)

ホテル・ザッハーの1階にあるカフェは、ザッハートルテを食べに来た観光客でいつも行列ができているほどの人気ぶり。おみやげとして購入するなら、カフェのそばにザッハーエックというショップがあり、ホールサイズの木箱入りザッハートルテなどを販売しています。キューブ形のザッハーヴュルフェルというザッハートルテとほぼ同じチョコレートケーキもありますが、アルコール入りとアルコールなしがあるので、購入の際にはどちらかを必ず指定しましょう。

CAFÉ SACHER WIEN(カフェ ザッハー ウィーン)
08:00〜20:00

誰もがあこがれる魅惑的なチョコレート

マリー・アントワネットや皇帝フランツ・ヨーゼフ1世をはじめ、甘いもの好きが多かったハプスブルク家のもとで、オーストリアのお菓子は発展してきたといわれます。中でもチョコレートは、歴史的なエピソードや個性的な美しいパッケージなどの個性派揃いで、誰に贈っても喜んでもらえること間違いなし。もちろん自分用にも欲しくなってしまう誘惑には勝てません。お気に入りを見つけて、ぜひ味わってみてください。


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鈴木眞弓(すずき まゆみ)
EXSENSES公式ライター

フリーランスのエディター&ライター。『地球の歩き方ドイツ』『地球の歩き方ウィーンとオーストリア』など、ドイツとオーストリアに関する本を担当。両国のパンと、ケーキやアイスクリームを食べ歩くのが旅の主目的。

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