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堅牢な美しさで魅了する
岩手の伝統工芸品「南部鉄器」

岩手県盛岡市や奥州市で作られている「南部鉄器」。鉄の黒と優美なフォルムが魅力的な伝統工芸品です。また南部鉄瓶でお湯を沸かすと、お湯がまろやかで美味しくなると人気です。本記事では、南部鉄器の歴史や特徴、お手入れと使い方についてご紹介します。

南部鉄器が好まれている4つの理由

©岩手県観光協会

日本国内だけでなく、海外でも人気のある南部鉄器。近年では、黒だけでなく赤や緑などカラフルなものもあります。それでは、南部鉄器が好まれている、4つの理由について見ていきましょう。

1|一生ものとして長く愛用できる

鉄で作られている南部鉄器は、陶器や磁器などにより丈夫に作られています。正しいお手入れ方法で、丁寧に扱えば親子何代でも受け継ぐことが可能。長年使い込むことにより、鉄の経年美も愉しめます。

2|鉄瓶で白湯を愉しむ

鉄瓶で沸かしたお湯は、「まろやかで口当たりがよく美味しい」と言われます。これらは、水に含まれているカルキを鉄が吸着することにより、水が軟水化し美味しく飲みやすくなるためです。

3|保温性が高い

鉄は一度熱すると冷めにくい性質があり、保温性が高いのが特徴のひとつです。とくに南部鉄器は鉄の厚みがあり、熱も蓄えられ温度が下がりにくいというメリットもあります。

4|日本伝統品の美しさ

重厚で深みのあるスタンダードな黒い鉄瓶も魅力的ですが、モダンなインテリアにあうスタイリッシュなデザインも人気があります。

南部鉄器の歴史

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1|はじまりは江戸時代

南部鉄器が始まったのは江戸時代の初期ごろ。大名の間で茶道が流行し、南部藩(岩手県中部)の藩主が1659年に、京都から茶の湯釜を作らせたことがきっかけとされています。

当時の南部藩は、全国各地から鋳物師や茶釜職人を招き手厚く保護していました。さらに、南部藩の領土では鉄や粘土、漆など豊富にあったため、南部鉄器は発展しました。

南部鉄器の中でも人気のある「南部鉄瓶」が誕生したのは、江戸時代の中期ごろ。お湯を片手でも注げるようにと、取ってを付けたことがはじまりです。

2|全盛期は明治時代から大正時代

明治時代になると、大正天皇が南部鉄瓶の制作現場を見学され、新聞に取り上げられました。さらに、「第一回 内国勧業博覧会」にて花紋賞牌を受賞。これらをきっかけに南部鉄器は全国に知れ渡り、大正時代には全盛期となりました。

3|第二次世界大戦に衰退

戦争が開戦すると、職人は徴兵され、鉄は供出するため南部鉄器は一時的に衰退しました。

4|国の伝統的工芸品に

1959年に、岩手県盛岡市と奥州市が連合会を発足し、「南部鉄器」という統一名称をなりました。また1975年、南部鉄器は国の伝統的工芸品として認定。このよう歴史を経て、南部鉄器は地位を得たのです。

南部鉄瓶の外側と内側の種類

南部鉄瓶の内側は、「釜焼き」されているため、直接火にかけても問題ありません。ただし、茶こしは付いておらず、南部鉄瓶は火にかけてお湯を沸かす道具として使用します。

さらに内側は鉄が剥き出しになっているので、お湯を沸かすと鉄分が溶けだします。そのため、南部鉄瓶は鉄分補給の役割としても注目されているのです。

南部鉄瓶の外側(表面)には、さび止めのためにさまざまな塗装を施しています。本来、さび止めには、漆の樹液を使用した「漆焼付け」でした。しかし、漆が少なくなるにつれカシューナッツを使用した「カシュー焼付け」が主流になりました。

「南部鉄瓶」のお手入れと使い方

① はじめに
南部鉄瓶のフタをとり、中を水で軽くすすぎましょう。スポンジやたわしなどではこすらないよう注意してください。軽くすすいだら、南部鉄瓶へ8分目ほど水を入れて沸かします。こちらの作業は、2~3回ほど繰り返すのが良いでしょう。

鉄臭さが取れない場合、1~2回ほど水ですすぎ、湯飲み1杯分くらいの「煎茶の茶がら」をダシ取り用のパックなどに入れ、お湯と一緒に半日ほど煮込んでください。

② 毎日の取り扱い
南部鉄瓶の内側は釉薬を使っていないので、水気が残ったままの状態だとサビの原因になります。お湯を沸かしてお湯を使い切ったあと、フタを外しておけば余熱で乾燥します。

もし余熱で乾燥しない場合には、フタをあけて15~30秒ほど加熱して乾燥させましょう。決して内側をたわしやスポンジを使用して洗わないでください。

③ 内側にサビが出来てしまったとき
湿度がある場所へ置いていたり、残ったお湯を捨て忘れたりすると、内側にサビが付いてしまいます。そのような場合には、「煎茶の茶がら」を使ってサビを落としましょう。 鉄瓶の8分目まで水を入れ、煎茶の茶がらをダシ取り用のパックに入れます。

そして、お湯が黒くなるまで煮だしてください。お湯が黒くなったら火を消し、溢れない程度に水を足して半日ほどそのまま置いておきます。頑固なサビの場合は、2~3回程「煎茶の茶がら」を使った方法で、手入れをすると良いでしょう。

南部鉄瓶の使い方のポイント

・洗うときは水で、すすぐだけでよい
・南部鉄瓶の中にお湯や水などをそのままにしない
・空焚きはしない
・日常使いする方が良い
・湿度のない風通しの良い場所に置く

南部鉄瓶で作った白湯で毎日の暮らしを一歩豊かに

南部鉄瓶で沸かしたお湯で淹れたコーヒー

堅牢で重厚感のある美しい外観が魅力的な、伝統的工芸品である南部鉄器。また、南部鉄瓶でお湯を沸かすと、お湯に鉄分が多く含まれているため、まろやかで口あたりの良い「白湯」となります。さらに、南部鉄瓶で沸かしたお湯で、珈琲を淹れるのも格別です。ぜひ、毎日の暮らしの一部に「南部鉄器」を取り入れてみませんか。

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どいまちこ
EXSENSES公式ライター

高知県の古民家で保護猫2匹と暮らしているフリーライター