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夏の風物詩、風鈴。軒先で涼やかな音を奏でる様子は、日本の夏を感じる風景のひとつです。岩手県で生産される南部風鈴は、鉄製の重厚感ある風情と、見た目に反した高く澄んだ音で長く愛されてきました。本記事では、南部風鈴の歴史や特徴、おすすめの販売店舗などを紹介していきます。
岩手の名産品、南部風鈴
南部風鈴は、伝統的工芸品「南部鉄器」で知られる岩手県の南部鉄を使用して作られた風鈴です。どのように作られるようになったのか、その歴史から紹介していきます。
南部風鈴の歴史
南部鉄器には二大産地があります。
ひとつは旧伊達藩である水沢市。平安時代末期、平泉文化の祖でもある藤原清衡が近江国(現在の滋賀県)から鋳物師を招き、鋳造を行ったのがはじまりとされています。この「水沢鋳物」は鍋や釜などの日用品から、寺社・仏閣用品の製造へと発展していきました。
もうひとつの産地は旧南部藩である盛岡市です。江戸時代に藩主であった南部家は、代々茶道に造詣を深くしていました。八代藩主である利雄が京都の茶釜師を招いたことがきっかけで、茶の湯釜、鉄瓶作りの文化が花開いていったといわれています。
この二つの産地に起源を持つ岩手の鉄器が「南部鉄器」として名称が統一されたのは、昭和になってからのことです。昭和期には大量生産が可能な「生型鋳造法」が広まり、鍋や花瓶などの工芸品も多く作られるようになりました。風鈴もその一つですが、大正時代には盛岡の釜師の手遊びで作られていたともいわれています。
そもそも、風鈴はもとは魔よけとして使われる仏具でした。「風鐸」と呼ばれる鐘型の鈴が原型で、寺院の屋根の四隅にかけ邪気を払うものでした。昔、強い風は疫病や邪気を運んでくると考えられており、風鐸を吊るすことで、その音が聞こえる範囲は聖域だと考えられていたのです。
その後平安時代になると貴族が魔除けとして軒先に吊るすようになり、明治以降になると現在のように一般的に浸透するようになっていきました。
南部風鈴の音には、癒しの効果が
南部風鈴の特徴は、環境庁の「日本の音風景100選」にも選ばれた美しい音色です。ガラス製の風鈴が「チリンチリン」と短い音を鳴らすのに対し、密度の高い鋳物を使用している南部風鈴は、「リーン」と長く、高く澄んだ音が特徴です。風鈴の音には、癒し効果の高い小川のせせらぎや小鳥のさえずりなどの自然界の音と同じ3,000ヘルツ以上の高周波音が含まれています。
また自然界には、連続的でありながら一定ではない「1/fゆらぎ」 といわれる音のリズムが存在します。人間の心拍リズムとも同じこの「1/fゆらぎ」は、安心感やリラックス感をもたらすことがわかっています。風が作り出す「1/fゆらぎ」 を風鈴の音として聴くことで、自然の癒しを感じることができるでしょう。
職人技が光る、南部風鈴の製造工程
南部鉄器の技術を使用して製造されている南部風鈴ですが、南部鉄器の伝統的な製造工程は40~120工程、細かいものも数えると200ともいわれます。一人前の職人になるためには、少なくとも15年かかるといわれている工程の一部を抜粋して紹介していきます。
【鋳型作り】
実型(円筒形の素焼きレンガ)の内側に川砂や粘土などを入れ、図面を基にした木型を回転させながら鋳型を作ります。荒い型砂から、徐々に細かい型砂を入れ、最後に真土(まね)と呼ばれる細かい川砂で挽き上げます。
この鋳型を上手く作れるようになるまで2~3年かかるといわれる非常に難しい工程です。
【中子作り】
中子とは、鉄器の中空部分を作るために鋳型の中に入れる型のことです。焼砂や川砂、埴汁を混ぜ合わせ、中子砂を作ります。中子用の木型を使用し、鋳型作りと同様に中子砂を詰め、固めます。出来上がった中子は1~2日乾燥させる必要があります。
【鋳込み】
約1400~1500度にもなる溶解炉で鉄を溶かし、「とりべ」と呼ばれるひしゃくに汲み取り、鋳型に流し込みます。
工程の中で最も華やかな作業ですが、鋳型に鉄を注ぎ込む「注湯」は熟練を要します。
【炭火焼(金気止め)】
固まった鉄器を鋳型から取り外し、中子を取り除き、釜に入れて約800度の炭火で焼きます。
これをすることで鉄の表面に酸化皮膜をつけ、錆を防ぐことができます。
明治時代に盛岡で火事があり、その際に焼けた鉄器に錆が出なかったことから加えられた工程です。
【研磨・着色】
表面をやすりや砥石で整えた後、300度くらいの温度で加熱し、本漆の下塗り、おはぐろを塗って仕上げます。
南部風鈴が買えるおすすめ店舗3選
南部風鈴を取り扱うおすすめの店舗を紹介していきます。各店舗それぞれの特長や個性があるので、お気に入りの南部風鈴を探してみてください。
岩鋳
1902年(明治35年)創業。デザインから販売までの一貫生産体制を整え、年間100万点もの商品を製造しています。モダンなデザインとカラフルな色の南部鉄器は海外での人気も高く、新しい伝統の創造にも積極的なメーカーです。
及富
1848年創業。初代は伊達家のお抱え釜師として活躍した、歴史の深いメーカーです。現在は岩手県奥州市の町工場で15名ほどの職人たちが製造を行っています。
メロンやスイカをかたどった南部風鈴、コロナウィルス終息を願う「アマビエ風鈴」など、ユニークな南部風鈴が楽しめます。
小笠原鋳造所
南部鉄器のフィッシュパン、ブックエンドなどシンプルモダンなデザインの先駆者である鋳鉄作家・小笠原陸兆氏の工房です。
2012年に陸兆氏が亡くなり工場は閉鎖されましたが、氏のデザインした南部鉄器は地元の工場の協力で製作され続け、現在でも手に取ることができます。
南部風鈴を取り入れて、涼やかな夏を
今回は南部風鈴についてご紹介しました。目で見て、耳で聞いて涼を取ることができる風鈴は、残していきたい日本の文化です。ガラスの風鈴とはまたひと味違った魅力があり、涼やかな夏を感じることができます。ぜひおひとつ、手にとってみてはいかがでしょうか。
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