32

ミニの女王の足跡をたどる、
マリー・クワント 日本初の回顧展

2022年11月26日(土)から2023年1月29日(日)までの会期で、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムにおいて『マリー・クワント展』が開催中です。英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(略称V&A)の所蔵する約100点の衣服を中心に、バース・ファッション博物館、「マリークワント」アーカイヴなどからの小物や写真資料、映像が展示されています。ブティック「BAZAARバザー」を開店した1955年から国際的なライセンス業務に専念するようになる75年にかけてのマリー・クワントのデザイナーとしての業績と先見性のある起業家としての歩みをたどる日本初の回顧展です。

「マリークワント」とは

マリー・クワントと、夫でビジネスパートナーのアレキサンダー・プランケット・グリーン。
1960年 Courtesy of Terence Pepper Collection. © John Cowan Archive

「マリークワント」といえば、黒いデイジーマークのブランドアイコンで知られるイギリスを代表するファッションブランドです。1960年代の半ばから後半にかけ、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ツィギーなどと「スウィンギング・ロンドン」という若者たちのカルチャームーブメントを牽引したマリー・クワント。25歳という若さでブティック「バザー」を立ち上げ、その後も旧来的な既成概念を打破して躍動感あふれるデザインを世に出し続けました。
ミニスカートやタイツ、PVC(ポリ塩化ビニール)のレインウェアやジャージー素材のドレスなどをヒットさせたのも彼女です。世界のファッションを塗り替えたマリー・クワントの足跡をたどる展示は、4つのセクションに区分され、「ブランドの構築(1955〜67)」「成功への扉(1663〜68)」「グローバル化(1965〜75)」「ファッションの解放(1964〜75)」の順で並んでいます。

第1章:ブランドの構築

1955年、ロンドンのチェルシー地区、キングスロードにブティック「バザー」を開店

子供の頃からファション好きだったマリー・クワントは、大学でファッションを学ぶという希望を持っていましたが、両親の意向でゴールドスミス・カレッジで美術を学ぶことに。卒業後は高級帽子店「エリック」のアトリエで見習いとして働き始めますが、まもなく退職し、1955年、大学で出会ったアレクサンダー・プランケット・グリーンと友人の実業家アーチー・マクネアをビジネスパートナーにブティック「BAZAARバザー」を開店します。当初はセレクトショップでしたが、1年後にはクワント自身が着たいと思うアイテムを自分でデザインして販売します。パリの高級注文服がファッションの中心だった時代に、斬新なウィンドウディスプレイと若者向けのアイテムが並ぶバザーは注目を集め、大人気になります。

BAZAARのロゴが入ったショッパー。背後の写真はクワントの髪をファイブポイントカットにするヴィダル・サスーン
「エキセントリックな英国人」の展示。中央でロブスターを散歩させている衣装はヴィクトリア朝スタイルのツーピース

第2章:成功への扉

「マリークワント」の二つ目のライン「ジンジャー・グループ」のラインナップ

「バザー」を情報発信基地として展開したクワントの提案するファッションはアメリカでも評判になります。1960年代には大手百貨店チェーンの「J.C.ペニー」、大手衣料メーカーの「ピューリタン・ファッションズ」の依頼で既製服のデザインを提供し、大量生産によってより多くの人々にクワントのデザインが届くようになりました。その一方で、「ジンジャー・グループ・コレクション」というそれまでよりも低価格なラインを立ち上げます。ジンジャー(赤茶色)やマスタード・イエローなどの流行色とは全く異なる色彩を用い、トータルコーディネイトのしやすさが特長でした。このセクションでは、いよいよクワントの代名詞となる「ミニスカート」の展示が登場します。

ウールツイード、コットンの機械編みレース、機械編みウール、ウールジャージーなどさまざまな素材で作られたミニスカート

第3章:グローバル化

ボンディング加工のジャージーを使ったドレスとウールフェルトのベレー帽

合成繊維などの新しい素材を積極的に扱ったのもクワントでした。1963年に発表したPVCを使った、雨に濡れても平気な「ウェット・コレクション」は大評判となり、2年後の1965年には老舗の「アリゲーター・レインウェア」社とのコラボで新しいレインウェアシリーズが誕生。また、「マリークワント」のブランドとして、ウールのジャージー素材を使ったミニドレスやルームウェア、下着、化粧品などライフスタイル全般を扱うようになります。グローバル化が展開するなか、クワント自身は、ファッションアイコンとしてメディアに登場。1966年、クワントは輸出振興の業績でエリザベス女王から大英帝国勲章を授与されますが、バッキンガム宮殿での式典には、ジャージードレスほか、帽子から靴に至るまで、クワント自身がデザインしたアイテムで身を固めて出席し、世界中の新聞に取り上げられました。そしてこの年に「デイジーマーク」の商標登録を行なっています。

マリー・クワントがデザインしたアリゲーター・レインウェア社のレインケープ
中央の展示は勲章授与式に着用したジャージードレスとベレー帽

第4章:ファッションの解放

「女の子だって『ボーイッシュに』」の展示。手前のトリコロールのドレスは、ジンジャー・クループの「トロンプ・ルイユ」

クワントは階級意識や当時の社会通念による女性像(ジェンダー)といった既成概念をファッションを通じて打ち破る役割を果たしました。紳士服や軍服、スポーツウェアや女児の遊び着などからインスピレーションを得てデザインされた衣服は、上質でありながら手頃な価格で提供され、つねに若い女性たちの味方でした。1960年代後半は、あどけなさとユニセックス性をもったデザインが追求されるようになります。ツィッギーなどのボーイッシュなモデルの起用も話題になり、大ヒットにつながりました。クワントは新しいライフスタイルにつながるデザインを発表し続けましたが、「ミニスカート」はロンドンの若者スタイルであると同時に、女性解放の象徴となりました。

真っ赤なフリルのマキシ丈ドレスはポリエステルのタフタ生地、ストライプのホルスターネックのマキシ丈ドレスはレーヨンプリントを使用

同展に合わせてドキュメンタリー映画も公開

かつては富裕層や上流階級だけのものだったファッションを「自分自身やなりたい自分を表現するための手段」として、誰もが手に入れられるように情熱を傾けたマリー・クワント。女性たちのファッションと意識を開放したその足跡を、英国で40万人が訪れた「マリー・クワント展」でたどってみてはいかがでしょうか。同展覧会の開催に合わせて、クワントの横顔や生涯を添い遂げた夫婦の知られざるエピソードが明かされる、映画『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』が、11月26日(土)よりBunkamura ル・シネマほかの劇場で、全国で順次公開されています。

映画『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』
https://www.quantmoviejp.com/

マリー・クワント展 開催概要
開催期間:2022年11月26日(土)〜2023年1月29日(日)
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
※状況により、会期・開館時間等が変更となる可能性があります。
休館日:1月1日(日・祝)
※お出掛けの際には、必ず最新情報を施設の公式ウェブサイトでご確認いただくか、施設にお問い合わせください。
32