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冬の北極圏で体験!
北欧の極夜シーズンの楽しみ方

1月下旬の午後3時20分のホニングスヴォーグ(北緯71度)はすっかり闇の中だった

北極圏では夏に太陽が沈まない白夜、冬は逆に太陽が昇らない極夜のシーズンがあります。極夜の季節は日照時間が極端に短くなりますが、夜の時間が長いことで絶景と出合うチャンスもあります。北欧のライフスタイルにも大きな影響を与えた極夜シーズンの楽しみ方をご紹介します。

太陽が昇らない極夜は、いつどこで体験できるの?

北緯66度33分以北の北極圏で見られる現象

ノルウェー本土沖合に浮かぶ小島Vikingen Islandには北極圏の66度33分を示すモニュメントが立っている

白夜や極夜などの現象は、北緯66度33分よりも北の北極圏エリアで見ることができます。高緯度のエリアに行くほど冬の夜の時間は長くなり、北緯70度よりも北のエリアに11月下旬から1月中旬にかけて滞在すれば、明るい時間が正午前後に1~3時間しかない長い夜が続く日々を体験できます。

極夜を体験するならどこの町で?

トロムソは世界最北の総合大学がある人口約7万7000人のにぎやかな町だ

北極圏に位置する町は数多くありますが、アクティビティメニューが豊富で町歩きも楽しめる場所としてノルウェーのトロムソを一番におすすめします。オーロラ観測地としてポピュラーで、レベルの高いレストランも揃っています。スキーなどのウィンタースポーツを楽しむなら、フィンランド北部に位置するルカやレヴィなどのスキーリゾートもいいでしょう。ナイター設備が整っていますので、暗くなってからも滑ることが可能です。

極夜の季節はこんなふうに楽しめる!

屋外でも多くのことが体験可能!

人気アクティビティの犬ぞりも体験できる

極夜の時期は明るい時間が極端に短くなりますが、現地のアクティビティは通常ペースで催行されています。アクティブに楽しむなら犬ぞりやスノーモービルがおすすめです。お昼前後の催行であれば、ずっと夕焼けが続いているかのような美しい色合いの空の下で、乗車体験ができます。

写真左:夜のスノーモービルドライブならオーロラ遭遇のチャンスもある|写真右:薪をくべた暖炉で調理された料理は香りがよく、油も適度に抜けるので格別の味わい

北欧の冬は屋外にあるテント型の建物で過ごす楽しみ方も人気です。中央には薪をくべた暖炉があり、シェフが目の前で調理してくれるレストランもあります。犬ぞりツアーのあとのティータイムで立ち寄ることもあるかもしれません。暗く寒い屋外から暖炉がある暖かい建物に入れば、それまでの寒さを忘れるほどリラックスできます。

極夜シーズンは空の色に注目

1月下旬のノルウェー北端の沿岸部では16:30からオーロラを見ることができた

極夜の空を彩る最もダイナミックな色は、オーロラの光のカーテンの緑色です。目で見ると緑色はそれほど強く感じられませんが、写真に撮るとはっきりと見ることができます。激しく動くオーロラの場合は、すその部分がピンク色に光りながらすばやく動く様子も観察できます。極夜の時期はオーロラ観測ができる暗い時間が多くなるので、オーロラの可視率が高まるというメリットもあります。

全世界がピンク色に染まる景色は壮観。冬の北極圏ならではの色合いだ

日の出前と日没後のわずかな時間はマジックアワーと呼ばれ、暖色系の美しい色合いの空を見ることができます。北極圏ではその時間帯が1~2時間も継続し、空が適度な厚さの雲で覆われていれば視界すべてがサーモンピンクの色に染まります。

1月中旬のトロムソで15時過ぎに撮影。ISO6400で絞りF4.5、シャッター速度80分の1秒だった

写真に撮ったときに美しい夜景を撮ることができるのが、空が濃いブルーに染まるブルーモーメントの時間帯です。朝晩ともに出合うことができる自然現象ですが、雲があると町の明かりが雲に反射してしまうので見ることができません。スマホを含む最近のカメラなら手持ちでも撮影できますのでお試しを。

極夜が育んだ北欧の文化

北欧デザインは照明も美しい

デザイン界の巨匠アルヴァ・アアルトが設計した部屋。ペンダントライトと壁際の間接照明が空間を効果的に照らしている

北欧では間接照明が多く使われています。日本で生活している感覚からすると明るさが足りないと感じることもあるかもしれませんが、暗く寒い外から帰ってくるとほっとする明かりだということに気づくでしょう。

写真左:食卓のろうそくの光をメインのライトにしているレストランもある|写真右:小さな町のショップでも多種多様なキャンドル製品が売られている

また北欧諸国はろうそくの消費量が世界で最も多いと言われています。現地を訪れると特別な演出の明かりとしてではなく、普段使いで利用されていることがわかります。キャンドルホルダーもさまざまなショップで売られています。

道具も薄明かりで使えるように発達した

アイスランド南部にある博物館では糸紡ぎの使い方を実演で説明してくれた

昔は生活に必要な身の回りのものを各家庭で自作していました。家具や食器だけでなく、衣類も糸を紡ぐところから手作りしていたほどです。いくつかの工具は明かりが乏しい場所でも扱えるようにデザインされており、極夜シーズンの暗い夜にも作業ができるように道具が進化してきました。

冬でも日向ぼっこを楽しむ人々

マイナス10度近くになる真冬でも屋外に席が設けられている

冬の北欧を初めて訪れたときのことです。曇天のなか雪が積もっているベンチに腰掛けている人の姿に驚いたことがあります。その後も冬の北欧で外のベンチで日向ぼっこを楽しむ人々を目撃し、北国の人々には大事な時間なのだとわかるようになりました。

1月下旬のトロムソの12:23の景色。久しぶりの太陽を見るために町の人が足を止めていた

トロムソに滞在したときは昼の時間が日に日に長くなっていましたが、悪天候に見舞われてずっと太陽の光を見ることができませんでした。しかし滞在最終日に天気がよくなり、一瞬太陽が姿を見せました。そのときは地元の方とともに思わず立ち止まり、暖かな光を楽しみました。太陽の光のありがたみが実感できた瞬間でした。

寒くて暗いだけの季節ではありません

極夜シーズンの旅行は日照時間が極端に短いため、観光旅行には不向きな時期とされてきました。しかし極夜は限られた場所で限られた時期にしか体験できない貴重なチャンスです。特にオーロラを目的とする旅でしたら、夜の時間が長い極夜の時期は観測に有利です。冬の旅行先候補として検討してみてはいかがでしょうか。

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小山田浩明(おやまだ ひろあき)
EXSENSES公式ライター

フリーランスのフォトグラファー。会社員時代は、海外旅行ガイドブック編集部で52カ国を担当。特に北欧、スイス、オーストラリアの取材経験が豊富。