アリスのふしぎで、おかしな世界にどっぷり浸かる
「特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―」開催

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特別展アリス

2022年7月16日(土)から10月10日(月・祝)までの会期で、六本木の森アーツセンターギャラリーにおいて「特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―」が開催中です。昨年の暮れまで約半年間の会期で、英国・ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(略称V&A)にて開催され、大好評のうちに終了した「Alice: Curiouser and Curiouser」の巡回展の見どころをご紹介いたします。

アリスのへんてこりんな世界に迷い込む

特別展アリスの内部

数学者でもあるルイス・キャロルが生み出した『不思議の国のアリス』は、ガーディアン紙が「優雅でユーモアにあふれたナンセンス」と評したように、その独特の世界観は、小説の世界だけでなく映画やアート、ファッションなどの文化現象として広がりを見せました。本展は物語の原点であるルイス・キャロルの構想やジョン・テニエルが描いた挿絵の原画をはじめ、『不思議の国のアリス』の初版が出版されて依頼、160年の間に影響を与えてきた数々の作品と資料約300点が集結。劇場デザインを手掛けるトム・パイパーがデザインを担当した没入型の展示は、見る者を『不思議の国のアリス』の世界へ、遊び心いっぱいの摩訶不思議な空間へと誘います。

本展の展示は5つのパートに分かれています。ルート順にご紹介いたします。

第1章:アリスの誕生

不思議の国のアリス初版本の挿絵
マッド・ハッターのお茶会でのアリス、『不思議の国のアリス』初刊行版本より、ジョン・テニエル画 、1866年、V&A内ナショナル・アート図書館所蔵 ©Victoria and Albert Museum, London

著者ルイス・キャロルの手書きの構想や挿絵を担当したジョン・テニエルの原画や版画をはじめ、物語が生み出された英国の黄金時代とも言えるヴィクトリア朝という時代背景も紹介します。数学者、作家ではない、キャロルのもう一つの顔である写真家としての作品も見ることができるほか、金子國義や酒井駒子ら日本人によって描かれた『不思議の国のアリス』の原画も展示されています。

金子國義が描いたアリス
画家の金子國義(1936-2015)は、1974年にイタリアのオリベッティ社が制作した絵本『不思義の国のアリス』の挿絵を担当して以降、数々のアリス作品を残している

名作を生み出した「黄金の午後」

ルイスとアリスの写真
写真左:チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(ルイス・キャロル)、ドジソン家のアルバムより、19世紀 © Victoria and Albert Museum, London 写真右:.聖アグネスの姿をしたアリス・リドゥル、ジュリア・マーガレット・キャメロン撮影、1872年9月、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館所蔵 © Victoria and Albert Museum, London

今からちょうど160年前の1862年7月のある晴れた日の午後、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(ルイス・キャロル)は、オックスフォード大学クライスト・チャーチの学寮長であるヘンリー・リドゥルの娘アリス・リドゥルとその姉妹に、アリスという名前の少女が主人公の冒険譚を即興で話して聞かせました。その話を気に入ったアリス・リドゥルが物語として書いてほしいとお願いしたことがきっかけで、キャロルは2年の月日をかけて、挿絵も自身で描いた手書きの『地下の国のアリス』の本をアリスにプレゼントしました。1865年にはその物語をもとにした書籍『不思議の国のアリス』(英題:ALICE’S ADVENTURE IN WONDERLAND)が出版されました。キャロルは、物語が生み出された時のことを「黄金の午後」と呼びました。

第2章:映画になったアリス

映画になったアリスの展示様子

『不思議の国のアリス』は、あらゆる表現者に多くのインスピレーションを与えていますが、映画の世界も例外ではありません。本章では、サイレント映画の時代から、1951年公開のディズニーアニメーション『ふしぎの国のアリス』、ティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)、『アリス・イン・ワン ダーランド/時間の旅』(2016)までを紹介します。『アリス』の映画は、さまざまな国で製作されていますが、原作に忠実なもの以外に、時代や文化、社会といった背景を反映させた独創的な「不思議の国」が生み出されました。

ディズニー映画『ふしぎの国のアリス』の、メアリー・ブレア作のアリス

公開から70年以上が経過した今でも高い人気を誇る『ふしぎの国のアリス』。ウォルト・ディズニーは、この物語に関心を寄せ、1930年代には長編映画としての製作を企画していたようです。第2次世界大戦をはじめさまざまな障害がありましたが、続編の『鏡の国のアリス』を織り交ぜた脚本とアニメキャラクターとしてのアリスに命を吹き込んだメアリー・ブレアのコンセプト画が完成し、『シンデレラ』公開の翌年の1951年に『ふしぎの国のアリス』は公開され、絶大な人気を博します。

映画になったアリスの展示物

第3章:新たなアリス像

チェシャー猫のポスター
サイケデリックなチェシャー猫のポスター、米イースト・トーテム・ウエスト社発行、1967年、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 © Victoria and Albert Museum, London

「不思議の国」の持つ世界観は、あらゆるアーティストの想像力をかき立てます。
シュルレアリスムの画家サルバドール・ダリが1969年に描いた挿絵や、草間彌生の絵本『不思議の国のアリス With artwork by草間彌生』、ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットデザインを手掛けた英国のポップアーティストのピーター・ブレイクの作品などを展示します。

新たなアリス像の展示物
4つのアリスのティーパーティーのインスタレーション
時間と共に表情を変える、アリスのティーパーティーのインスタレーション。 Tea Party created by Victoria and Albert Museum, Alan Farlie, Tom Piper, Luke Halls Studio © Victoria and Albert Museum, London

第4章:舞台になったアリス

ハートのクイーンを演じるゼナイダ・ヤノウスキー
ハートのクイーンを演じるゼナイダ・ヤノウスキー、英国ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスでの英国ロイヤル・バレエ団公演『不思議の国のアリス』より、2011年~ ©ROH, Johan Persson, 2011 . Sets and costumes by Bob Crowley

繰り返し舞台化されるアリスの物語では、脚本はもちろん、劇場デザイン、振り付け、そして何よりもステージを彩る舞台衣装に注目が集まります。ロイヤル・バレエ団の『不思議の国のアリス』の舞台衣装やセット模型、公演ポスターだけでなく、ロンドン・ナショナル・シアターで上演された『ワンダー・ドット・ランド』の舞台衣装も並んで迎えてくれます。

アリスの舞台衣装が展示されている様子
右のふたつは、ロンドン・ナショナル・シアターで上演された『ワンダー・ドット・ランド』のアリスと白うさぎの舞台衣装

第5章:アリスになる

ヴィヴィアン・ウエストウッド ゴールド・レーベルのアンサンブル
ヴィヴィアン・ウエストウッド ゴールド・レーベルのアンサンブル、2015年春夏コレクションで発表 ©UGO Camera

ルイス・キャロルとジョン・テニエルが創り出した『不思議の国のアリス』の世界を起源に、幅広い分野で独創的な翻訳が行われた作品が生み出されています。これまでの展示で、「アリスの物語」の持つさまざまな魅力や可能性に触れてきた来場者に、最後の展示が示すメッセージは、あなた自身が「アリスになる」こと。

アリスになるの展示様子

このコーナーのテーマは、自己表現としてのアリスです。マッドハッターを現代風にアレンジしたヴィクター&ロルフのデザインほか、ヴィクトリア朝をはじめとする歴史的な衣装からインスピレーションを得た、日本発のスイート・ロリータ&パンク・ロリータの衣装の展示もあります。

ピレリ社制作のポスター
アリス、『不思議の国のアリス』をテーマにした2018年のカレンダー、ティム・ウォーカー撮影、ピレリ社制作 © Tim Walker Studio Courtesy of Pirelli&C.S.p

イタリアのタイヤメーカーのピレリ社は、毎年世界のトップフォトグラファーを起用したカレンダーを制作していますが、2018年は、ファッション写真家のティム・ウォーカーが選ばれました。ウーピー・ゴールドバーグ、ナオミ・キャンベル、パフ・ダディなど、俳優 、モデル 、ミュージシャン 、活動家など全員黒人をモデルにして現代版「不思議の国」を描いています。

おまけ

『不思議の国のアリス』が生まれたオックスフォードの街
オックスフォードの街は「夢見る尖塔」と呼ばれ、英国最古のオックスフォード大学がある

キャロルがリドゥル三姉妹に語った物語は、オックスフォードに近いテムズ川の船の上で生まれましたが、オックスフォードの街には、続編の『鏡の国のアリス』の中に登場する「編み物をする羊のお店」のモデルとなった店があります。アリス・リドゥルがキャンディやお菓子を買った小さな店で、今ではさまざまなアリスの関連グッズを売る「アリス・ショップ」になっています。

イギリスの『不思議の国のアリス』ショップ
The Alice’s Shop
83 St Aldates Oxford, OX1 1RA, UK
http://www.aliceinwonderlandshop.co.uk/

もっと、アリス展を楽しむ

『不思議の国のアリス』チェシャ猫のぬいぐるみ

鑑賞後のお楽しみは、さまざまなアリスグッズが購入できるショップ。V&Aオリジナルのものから、日本開催の本店のために用意されたオリジナルグッズも並びます。

『不思議の国のアリス』グッズショップの店内

会場と同じフロア(52F)にあるレストラン「THE SUN & THE MOON」では、「へんてこりん」なコラボメニューも楽しむことができます。

『不思議の国のアリス』を表現した、へんてこりんなコラボメニュー
コーヒー、ヘーゼルナッツをベースとしたカクテル「Black or White?」(1,600円、左)、パティは大豆ミートにこんにゃくと豆腐を練り込んで焼いた「アリスのへんてこりん、へんてこりんなBLTバーガー」(2,000円、右)
『不思議の国のアリス』を表現した、アリスのへんてこりん、へんてこりんなアフタヌーンティー
「アリスのへんてこりん、へんてこりんなアフタヌーンティー」(5,500円)。注目は、5ステージの見た目は抹茶パイ、中身はグリーンピースと抹茶クリームの「へんてこりんなミルフィーユ」とポークリエットとレフォール(西洋わさび)クリームの「へんてこりんなシュークリーム」 (右下)
『不思議の国のアリス』メニューが楽しめるTHE SUN & THE MOONの店内
THE SUN & THE MOON
http://thesun-themoon.com

あなたも不思議の国へ行ってみよう

『不思議の国のアリス』チェシャ猫のインスタレーション

アリスの原点から、映画、アート、舞台、ファッションまで、英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館と海外所蔵作品を中心とした展覧会であり、「アリスの物語」の魅力を再確認、再発見できる、ファンならずとも見逃せない企画展となっています。あなたも摩訶不思議な<アリスのへんてこりん、へんてこりんな世界>に迷い込んでみませんか。

「特別展アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―」
会期:2022年7月16日(土)~10月10日(月・祝)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)
開館時間:10:00~ 20:00(月・火・水曜は18:00まで)
※9/19、10/10は20:00まで
※最終入館は閉館30分前まで。
※会期・開館時間は変更の可能性があります。
 来館前に必ず公式サイトをご確認ください。
※事前予約制
休館日:会期中無休
公式サイト:https://alice.exhibit.jp

◎巡回先:大阪会場
会期:2022年12月10日(土)~2023年3月5日(日)
会場:あべのハルカス美術館

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エクセンス編集部
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