ふたつの火山がそびえる絶海の孤島を2日間で周遊
八丈ブルーの海に囲まれた「八丈島」を巡る旅

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島の北側に位置する底土港を出航した船から見た八丈島

八丈島(はちじょうじま)は東京から約290km南方に位置する島です。東京港から三宅島を経由する定期船が運航されており、羽田発ANAのフライトもありますのでアクセスしやすく、ベストシーズンの夏は特ににぎわいます。レンタカーで巡り、2日間で八丈島の自然を満喫できるモデルプランをご紹介します。

本文で紹介している見どころやスポットは以下の地図からご覧いただくことができます。

八丈島ってどんな島?

島の海の玄関口「底土港」のすぐ隣には海水浴場がある

2025年6月1日現在の人口は6720人、島の面積は約70平方kmです。島はふたつの火山によって生まれ、島の中央部が少しくぼんでいるひょうたんのような形をしています。三宅島同様、富士火山帯の上に位置している火山島です。島の近海を流れる暖流、黒潮の影響を受け、冬は暖かく夏もそれほど暑くならない海洋性気候の島です。

島の南部に位置する八重根(やえね)港は、フェリーが底土港に入れないときにも利用される

八丈島のふたつの火山、三原山(東山)は10万年以上前に、八丈富士(西山)は1万年以上前にできた海底火山です。古い三原山は複数回のカルデラ噴火(マグマなどの噴出があり、大きな凹みができる噴火活動)があったと考えられています。表層は保水力のある土壌に覆われていたため、降水により山が浸食されて深い森ができています。一方の八丈富士は有史以降も噴火活動があり、地形の浸食もそれほど進んでいません。大きく異なる自然環境を見せてくれます。

島の北西側の八丈富士は、円錐形のきれいな姿を見せる成層火山

島は火山によってできたため遠浅の海岸はなく、島の周辺は深い海になっています。島の北側を、流れの速い黒潮が通り、島への到達が難しかったことから、明治以前は流刑地としても使われていました。透明度が高い深く青い海の色は「八丈ブルー」と呼ばれています。
現在の八丈島はダイバーや釣り人、自然愛好家の注目を集め、首都圏から簡単にアクセスできる南の島として一般の旅行者にも人気の高い島です。

八丈島のおすすめ見どころ

南原千畳岩海岸(なんばらせんじょういわかいがん)

溶岩が作り出す景色はほかの惑星のような荒々しさ。沖合には現在は無人島の八丈小島が浮かぶ

八丈富士から南西方向の海に流れ出た玄武岩の溶岩が作った地形です。八丈島が火山でできた島であることを強く想起させてくれる絶景ポイントです。遠目には黒い溶岩大地が広がっているように見えますが、岩の上を歩くと溶岩の流出年代や方向、冷える速度により表面の形がさまざまに変化していることがわかります。

溶岩が流れだした跡を今もくっきりと見ることができる

宇喜多秀家公と豪姫の碑(うきたひでいえこうとごうひめのひ)

実生活では晩年を共に過ごすことができなかったふたりが並ぶ

豊臣秀吉の五大老だった宇喜多秀家は、関ヶ原の合戦で敗れ、1606年に初めての流刑者として八丈島に送られました。その後、廃藩置県が実施された明治4 (1871) 年までに、1900人近くが流刑で島に渡っています。

豪姫は加賀百万石を築いた前田利家の四女で、豊臣秀吉の養女として寵愛されていました。宇喜多秀家と結婚しましたが、八丈島に送られたのは夫とふたりの息子たちだけで、家族は別れ別れに暮らすことになりました。この記念碑は、宇喜多秀家が築いた岡山城の築城400年の年に立てられました。ふたりは領地の岡山の方向を見ています。

大里の玉石垣 (おおざとのたまいしがき)

風情のある、八丈島ならではの家並みが見られる場所

島の西側に位置する大里(おおざと)地区は、以前陣屋があり、島の役所もここに置かれました。この地区には今もきれいに保たれた石垣が残ります。玉石垣は、自然の力でできた楕円形の石を使って造られたもので、石垣の上には防風の役割を果たす椿などの常緑樹が植えられています。レンタカーで訪れたときは、Google Map上にポイントされている「ふるさと村」の北側の駐車場を利用できます。

自然の力で削られた丸石を積んで石垣が造られた

八丈植物公園(はちじょうしょくぶつこうえん)

園内は8つのパートに分かれており、ハイキングやサイクリングが楽しめる

空港のすぐ南に位置する広さ22ヘクタールに及ぶ自然公園です。園内は「林間ゾーン」「八丈の森」「世界の森」「学習の森」「日本の森」などと名付けられた8つのゾーンがあり、ビジターセンターや温室、展望台などもあります。

植物園は空港のすぐ隣に位置し、背後にそびえる八丈富士もきれいに見える

土・日・祝日にはイベントも開催され、ガイドウォークも実施されています。くまなく歩くと1時間以上はかかりますので、時間をあまり取れないようでしたら、ビジターセンターでその時期のおすすめエリアなどを尋ね、ポイントを絞って回るといいでしょう。

八丈ビジターセンターは植物園敷地内にある

ビジターセンターは単なる観光案内所ではなく、八丈島の成り立ちや人々の暮らし、生き物たちなどの展示も行われています。解説員が常駐していますので、島のおすすめを尋ねるだけでなく、自然や文化について質問することもできます。駐車場から公園内に入るとすぐの場所に位置していますので、まずはここを訪れることをおすすめします。

八丈島に自生する光るキノコ「ヤコウタケ」も見ることができる

底土海水浴場(そこどかいすいよくじょう)

八丈島では数少ない海水浴場。ウミガメと出合うチャンスもある

東京からの定期船がおもに発着する底土港の隣に造られた人工ビーチです。町から近く、ウミガメと出合う可能性も期待できる、貴重な海水浴場です。この周辺には宿泊施設も多いので、ビーチ遊びを考えるなら、三根地区で宿を取っておくと便利でしょう。

ふれあい牧場

牧場の端には展望ポイントがあり、空港のある坂下地区を一望できる

八丈富士の中腹にある牧場で、牛たちが飼われています。見学自由で、牧場の先まで行けば、八丈島の町と空港を見渡すことができます。期間限定(GWや夏休み)で、八丈島のジャージー牛のミルクを使ったアイスクリームも販売されています。

大坂トンネルの展望

八丈島でも屈指の絶景ポイント。夕刻の眺めが格別とのこと

火山でできた八丈島はあちこちで絶景を楽しめますが、ここは車があれば最も簡単に海と火山、溶岩台地と空の景色を楽しめる場所です。トンネル直前に展望ポイントがあり、上下線両方向から利用できる駐車場に車を止められます。

裏見ヶ滝(うらみがたき)

太古の森を歩いているような気分を味わえる散策路。滝の裏側を歩くことができる

八丈富士と対照的な、鬱蒼とした森に覆われる三原山の自然を楽しめる場所です。裏見ヶ滝はその名前のとおり、滝を裏側から見られる場所で、水のカーテンの裏を散歩できます。滝までは片道10分ほどの散策路を歩く必要がありますが、八丈島が北限とされるヘゴシダを見ることができます。

名古の展望(なごのてんぼう)

島の南部を見ることができる。条件がよければ青ヶ島を見ることができる

八丈島八景のひとつに数えられている展望ポイントです。八丈一周道路から近く、短時間で立ち寄りできるポイントですので、天気が悪くなければ途中下車して寄ってみてください。

みはらしの湯

露天風呂からの眺めは島随一のすばらしさ。ぜひ訪問して体験を

島の東端に近い場所にある温泉です。アクセスが悪いように感じられるかもしれませんが、すぐ近くにバス停留所がありますので、八丈町営バスを使って簡単にアクセスできます。

八丈島を2日間で楽しむモデルプラン

東京から三宅島へは飛行機または定期船で、午前8時台には到着します。1日目は少し余裕をみて10:00から行動を開始し、2日目は東京に戻るフライトに間に合うよう、15:30頃まで八丈島を楽しめるプランを作ってみました。島にはバスも走っていますが、多くの見どころを巡るには接続が悪いので、レンタカーを使って行動するプランとしています。

1日目 八丈島の自然と人々の暮らしに触れる1日

8:30 ANAのフライトで到着
または
8:55 大型客船「橘丸(さるびあ丸運航の日もあり)」で到着

植物園には昔の暮らしがわかる建物も展示されている

10:00 レンタカーを借り出し、大賀郷(おおかごう)または三根(みつね)エリアから出発
↓ 車で5~10分
八丈ビジターセンター(所要約30分)
↓ 徒歩すぐ
八丈植物公園、温室(所要約1時間30分)
↓ 車で5~10分

12:00 大賀郷または三根エリアで昼食(所要約1時間)
↓ 車で5~10分
大里の玉石垣(所要約20分)
↓ 車で約10分

黄八丈めゆ工房(黄八丈の織物について展示が行われ、お土産の購入も可能。所要約45分)
↓ 車で約5分。駐車場から徒歩約10分

滝の裏側に道が通っている裏見ヶ滝

15:00 裏見ヶ滝(駐車場からの往復で所要約30分をみておくといい)
↓ 駐車場まで徒歩約10本、車で約10分

名古の見晴らし台(所要約20分)
↓ 車で約10分

末吉温泉 みはらしの湯
↓ 車で約30分
大賀郷または三根エリアの宿泊施設にチェックイン

ワンポイント アドバイス

動線を考えると、1日目に大阪トンネル近くの訪問先を入れたほうがいいのですが、時間的に八丈服部屋敷の実演を見るのが難しいので、1日目はあえて通過しています。温泉を楽しめる施設は島の南部に点在していますが、眺望のよさで末吉温泉 みはらしの湯を訪問先候補としました。

2日目 絶景スポットで展望を堪能

山に道路が吸い込まれるすぐ手前に展望ポイントがある

9:30 大賀郷または三根エリアから出発
↓ 車で15~20分
八丈服部屋敷(樫立踊りと八丈太鼓の実演が見られる日がある。10:00~10:25開催で観覧料350円。開催日はまずここを訪問するといい)
↓ 車で数分
大阪トンネルの展望
↓ 車で数分

南原千畳岩海岸(所要約40分)
↓ 徒歩3分
宇喜多秀家公と豪姫の碑
↓ 駐車場まで戻り、車で5~10分

大賀郷または三根エリアで昼食
↓ 車で5~10分

底土海水浴場
↓ 車で約20分

ふれあい牧場(所要約40分)
↓ 車で約20分

スーパーあさぬま(お土産も購入できる八丈島最大のスーパーマーケット。9:00~20:00の営業)
↓ 車で数分
レンタカー会社へ車を返却
↓ レンタカー会社の送迎で空港へ
16:00~16:30 八丈島空港着

ワンポイント アドバイス

ビジターセンターで情報収集できるので、1日目は植物園からスタートしています。しかし、1日目の天気が2日目よりもよさそうでしたら、2日目の大阪トンネルからふれあい牧場までの訪問先を1日目にして、2日目のスケジュールと交換するのもありです。1日目の見どころは天気がよくなくても楽しめる場所です。

八丈島へのアクセス方法

航路:東海汽船

三宅島を経由して底土港に到着した橘丸

東京港発の東海汽船の大型客船が三宅島を経由して毎日運航しています。東京港発22:30で八丈島へは翌8:55の到着。復路は八丈島発9:40で東京港着19:40です(2025年4月~7月中旬のスケジュール)。到着港と出帆港は当日の海上と港内状況により変わります。島の北東の底土港がおもに使われていますが、島の南西にある八重根に変更されることもあります。

定期船を使う場合は、台風シーズンと冬から春にかけての風が特に強い時期の運航状況を必ず確認しましょう。三宅島まで運航してもその先はキャンセルになり、八丈島に渡れないということもあります。台風の影響を受けると何日も船が入らず、地元のスーパーでの食材入手も難しくなりますので、無理をせずに訪問予定を変更することをおすすめします。

東海汽船ウェブサイト

空路:ANA

空港は町の真ん中に位置している

ANAが羽田空港と八丈島空港との間にフライトをもっています。2025年6月現在、朝と昼過ぎ、夕方に3往復の便があり、所要時間は50~55分。1泊2日で八丈島滞在を楽しむなら、フライトを利用するのが最も便利です。

八丈島空港ウェブサイト
八丈島にはジェット機が就航し、羽田から1時間弱でアクセス可能

島内移動と島の宿泊施設

底土港から延びる八丈一周道路。八丈中央道路と交差するエリアに飲食店が集まる

観光するならレンタカーがおすすめ

八丈島は島を1周する道路があり、地図を見ると自転車でも観光できるように思われるかもしれません。しかし島は起伏が大きいので、空港周辺の大賀郷や三根エリアだけならともかく、南のほうに足を延ばすなら車を使うことを強くおすすめします。路線バスはおもな観光地を結んでいますが、島の南部まで行ける路線は往復で1日に7便ですので、途中下車を繰り返しながら複数の観光ポイントを巡るには向いていません。

平地の道は交通量も多くはなく運転しやすい

レンタカーは島のポピュラーな交通手段です。ナショナルブランドのレンタカー会社はありませんが、小規模の複数の会社がサービスを提供しています。車種は軽自動車からワゴンまで揃いますが、釣りをする場合は、事前に申請し利用可能な車種があるかどうかを確認する必要がありますので、ご注意ください。

島の宿泊施設

規模の大きなホテル型の宿泊施設は少なく、旅館や民宿、ペンションなどが点在しています。島の中心地である空港周辺エリア(大賀郷)や底土港の近く(三根)に物件が集まっています。マリンアクティビティを楽しむなら底土港エリアから宿探しをするといいでしょう。

八丈島観光協会ウェブサイト

島のグルメ

刺身も獲れたての新鮮な魚介類を楽しめる。歯ごたえの違いも楽しもう

八丈島は、島の食材を使った料理を出してくれる飲食店の数が多く、グルメ旅も楽しめます。ただ店の規模は大きくはなく、オフシーズンでも人気の店の夕食時は予約なしでは入れないということも。当日でもかまわないので、食事をしたいと思う店があれば予約してから出かけましょう。

島寿司

旬の魚を味わうことができる島寿司

八丈島の代表的なグルメと言えば、この島寿司は外せません。少し甘めのご飯に漬け魚をのせ、わさびの代わりにからしを使います。島寿司は事前予約が必要な店が多いので、できれば出発前、時間に余裕をもってリクエストしておくことをおすすめします。

明日葉(あしたば)料理

さまざまな調理法があるが、やはり天ぷらがおすすめ

セリ科の植物で、摘んだ翌日にはまた芽が生えてくると言われるほど、生育の早い植物です。天ぷらならほろ苦さが苦手と思われる人にも食べやすく、食感も楽しめます。

魚料理

くさやは八丈島名物。まずは少量を頼んで味見を

八丈島では新鮮な魚料理のほか、独特の臭いで有名なくさやも名物料理として味わえます。初めて味わうには癖の強い料理ですので、大人数で訪れていても少しずつ味わってみるのが安心です。

旅のシーズンと計画作りの注意点

風が強いので、崖の近くを歩くときは十分な注意を

ベストシーズンは7~8月

八丈島のベストシーズンはずばり7~8月です。この時期は雨量も比較的少なく、風も弱まりますので、行動しやすくマリンアクティビティも存分に楽しむことができます。八丈島は海洋性気候のため、快晴になる日は少なく、雨が多く風も強い気候が特徴です。山に登るときは十分な雨具を準備しておきましょう。

三原山に登るなら

八丈富士にアクセスする道路は2車線で運転しやすいのですが、三原山には車1台がやっと通れる程度の幅しかない道路があります。八丈一周道路から山に登る道路の多くが狭い道になっています。ポットホールや硫黄沼、唐滝などのスポットを訪れるなら、無理してセルフドライブせずに、ツアーを利用するのも手です。三原山、八丈富士ともに、登山の際には登山届を提出しましょう

八丈富士・三原山の登山届けについて

八丈島はアクセスしやすいのに、東京都に属しているとは思えない南国ムード漂う島です。流刑地として使われていたことや、弥生時代から人が暮らしていた歴史があることで、島には独特の文化やホスピタリティが残っています。セルフドライブが心配なら、まずは貸切りタクシーで島を巡り、2日目にお気に入りポイントをじっくり再訪問するという楽しみ方もできます。東京エリアから1泊2日で大自然を体験できる八丈島への旅はいかがですか?

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小山田浩明(おやまだ ひろあき)
EXSENSES公式ライター

フリーランスのフォトグラファー。会社員時代は、海外旅行ガイドブック編集部で52カ国を担当。特に北欧、スイス、オーストラリアの取材経験が豊富。

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