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全国的な名湯・城崎(きのさき)温泉をはじめとした観光地に、但馬牛などのグルメ。また、日本を代表する鞄の産地としても有名な、兵庫県豊岡市。今回は、たくさんある豊岡の魅力のなかから、郷土料理「出石(いずし)そば」を味わい、「城崎温泉」であたたまる、秋・冬におすすめの旅をご紹介します。関西圏に暮らす人たちにとっても定番の人気コースです。
コウノトリ舞うまち 豊岡
兵庫県は、摂津・播磨・但馬・丹波・淡路という、歴史も風土も異なる5つの地域からなります。豊岡は、県北部を占める但馬地域にふくまれます。兵庫県内では面積のもっとも大きい市で、北は日本海に接し、海・山・川と豊かな自然に恵まれます。
国の特別天然記念物である、コウノトリの保護活動に取り組むことでも有名です。
出石の郷土料理 出石そばを味わおう
透き通るような白磁の小皿に、そばを2、3口分ずつ盛る独特の様式が特徴の出石そば。うまいそばの三条件ともいわれる「三たて」(挽きたて・打ちたて・ゆがきたて)でつくられるそばは、味・香り・食感のどれをとっても絶品です。
出石には現在約50軒のそば屋が並び、関西屈指のそば処となっています。
「但馬の小京都」 城下町・出石
江戸時代には、出石城の城下町として栄えた出石。今でもその面影は色濃く残り、山々に囲まれるようにして、そこだけ時間をさかのぼったような雰囲気がただよいます。こぢんまりとしたまちを歩けば、出石城跡をはじめ、150年間時を刻み続ける時計台「辰鼓楼」、近畿最古の芝居小屋「永楽館」、江戸時代の武家屋敷「出石家老屋敷」など、あちこちで重厚な歴史の一端を垣間見ることができます。
このように点在する歴史遺産の数々や、碁盤の目状に整備された街並みなどから、出石は「但馬の小京都」ともよばれます。
アクセスは、大阪・神戸・京都から、車で約3時間。公共交通機関の場合、特急で約2時間半。JR「豊岡駅」「江原駅」「八鹿駅」で下車し、そこから全但バス「出石」行きで約30分です。
出石そばの歴史
出石そばの歴史は、今から300年以上前、江戸時代にまでさかのぼります。1706年、お国替えにより、当時の出石藩主だった松平氏に代わり、信州上田藩(現在の長野県上田市)の仙石政明が出石へ移りました。「お国替え」とは、江戸幕府の命令でおこなわれた、大名の配置替えのことです。この時に、そば好きだった政明が、信州のそば職人を引き連れてきたことで、そば打ち技術が出石に伝えられたとされています。
その後、現在のように小皿に盛りつける様式となったのは、幕末のころ。屋台で場所をとらないように、手塩皿にそばを盛ったのが、始まりとされています。
小皿に盛られたそばを、いくつもの味で楽しむ
出石そばは、小皿5枚で一人前として出されます。その後は、1枚からおかわりが可能です。出石では昔から、食べ終わった皿を重ねて、箸を立てた高さになるくらいが、成人男性の一人前ともいわれます。
そばには、徳利に入ったそばつゆと、玉子・山芋・葱・大根おろし・わさびなどの多彩な薬味が添えられてきます。玉子は、鶏卵が丸々一個。小皿の1枚1枚、薬味を変えながらいろいろな味わい方をできるのが、出石そばならではの魅力です。
薬味をすべて入れたつゆを割っていただくそば湯は、卵がとろりとかたまり、体も温まる優しい味です。
ここで、出石そばのおいしい食べ方の一例を紹介します。(但馬國出石観光協会HPより)
- つゆをお猪口に注ぎ、つゆの旨みを味わう。
- まず、そばとつゆだけで麺を味わう。
- 次に、薬味として葱、わさびでさっぱりといただく。
- 山芋、玉子でちがったおいしさを味わう。
- 最後は、そば湯で締めてごちそうさま。
そばの風味や、つゆの味は、お店ごとに個性豊かなので、何軒か回るのがおすすめ。3軒の出石そばを食べ比べできる「出石皿そば巡り巾着セット」(税別2000円)もあります。
また、出石産のそば粉を使ったジェラートや、そば餅などの、そばスイーツもおすすめです。
まち全体が温泉宿 城崎温泉で外湯巡り
出石そばでおなかを満たしたら、城崎温泉へ。出石から城崎温泉までは、車で40分ほど。公共交通機関の場合、「出石」から全但バスに乗車し、JR「豊岡駅」まで30〜40分、電車に乗り換え約10分でJR「城崎温泉駅」に到着します。
奈良時代から人びとに愛される温泉
城崎温泉は、2020年に開湯1300年を迎えた歴史ある温泉街。その起源について、このような逸話があります。
「奈良時代の717年、城崎へやってきた僧侶・道智上人が、難病の人びとを救うために、現在の『まんだら湯』の場所で、千日間お経を唱え続けた。すると、720年、その場所から温泉が湧き出した。」
これが、城崎温泉の発見とされています。
個性豊かな7つの外湯
旅館の中にあるお風呂を「内湯」というのに対し、外にある共同浴場のことを「外湯」といいます。城崎温泉には、内湯とは別に、7つの個性豊かな外湯(さとの湯・地蔵湯・柳湯・一の湯・まんだら湯・鴻の湯・御所の湯)があります。
城崎では、古くから「道は廊下、外湯はお風呂、宿は客間」という考え方が受け継がれています。そして、温泉街全体が一つのお宿のようにして、訪れた人たちをもてなしてきました。
7つの外湯は、源泉が発見された時期、お湯の温度や効能、建物の外観もさまざま。また、それぞれの湯には、誕生やその名にまつわる伝承があったり、「開運招福」「良縁成就」「商売繁盛」といったご利益がさだめられていたりと、個性豊かです。
浴衣と下駄で、趣ある温泉街を歩きながら外湯巡りをするのが、城崎温泉の楽しみ方です。
「文学のまち」の一面も
城崎温泉は、志賀直哉や与謝野晶子、司馬遼太郎など多くの文人にも愛され、数多くの文学作品の中で表現されてきました。現在、城崎には23の文学碑が建てられているほか、温泉街の真ん中に建つ城崎文芸館「KINOBUN」では、城崎温泉ゆかりの作家に関する展示がされています。
外湯を巡りつつ、「文学のまち」として散策してみるのもおすすめです。
おいしいおそばと温泉で癒されて
今回は、兵庫県豊岡の出石そばと城崎温泉について、歴史から楽しみ方まで、たっぷりとご紹介しました。だんだんと寒さも増してくるこの季節。そばと温泉に的をしぼったのんびり旅で、ほっこりとあたたまる時間を過ごしてみませんか。
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