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今回の旅先はポーランド。旅のテーマは、世界遺産に登録された「ビャウォヴィエジャの森」で黄金の秋を満喫するハイキングとその原生林に生息する絶滅危惧種のヨーロッパバイソンを観に行くことです。ガイドツアーでの野生のヨーロッパバイソンとの遭遇率9割以上という数字に期待を膨らませて、ポーランド北東部ポドラシェ地方を訪れました。そこでは野生のヨーロッパバイソンとの奇跡的な出合いが……。
ヨーロッパの中心に位置するポーランド
ポーランドは中央ヨーロッパの国々の中においてもその中心に位置する国で、7つの国と接しています。北はバルト海に面しており、北東に位置するロシア(飛び地カリーニングラード州)から時計回りに、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ、スロヴァキア、チェコ、ドイツに囲まれています。ポーランドの国名「ポルスカPOLSKA」の語源が「平原」を意味する通り、大平原の広がる国です。ヨーロッパの中心に位置することでさまざまな異文化が流入し、他に類を見ないほどの多様性を生み出す一方で、周辺列強による侵略、分割、征服など紆余曲折の歴史をもたらしています。
ポーランドで唯一の世界自然遺産
ポーランドを訪れたのは10月中旬。全土が北海道より高緯度に位置するポーランドでは、一足早い秋の黄葉の盛りを迎えていました。目的地はポーランドの北東部ポドラシェ地方にある「ビャウォヴィエジャの森」です。ベラルーシとの国境を跨いで広がる原生林の総面積は1500㎢で、625㎢がポーランド側にあります。ヨーロッパに残された最後の原生林と言われ、1979年にユネスコの世界遺産に登録(ベラルーシ側は1992年)されました。ポーランド国内では唯一の世界自然遺産です。広大な森林は原初の姿をそのままに留めており、300種を超える哺乳類、鳥類250種、昆虫8500種、維管束植物1000種、蘚苔類200種、地衣類300種など、多くの動植物の聖域となっています。
絶滅危惧種のヨーロッパバイソンとは
さて、お目当てのヨーロッパバイソン(ポーランド名:ジュブル)ですが、国際自然保護連合 (IUCN) の『IUCN絶滅危惧種レッドリスト™』に載っている野牛であり、ヨーロッパ最大の陸生哺乳類です。その姿は14000年以前の後期旧石器時代にスペイン北部のアルタミラやフランス西南部のラスコーの洞穴壁画に残されています。(世界史の教科書の最初の方に載っていた壁画に描かれていた牛の絵を覚えていますか。)1000年前にはヨーロッパの各所に生息していましたが、乱獲が原因で第1次世界大戦前には700頭ほどに。1919年、ビャウォヴィエジャの森に生息していた最後一匹が密猟され、この地域の野生の「ジュブル」は絶滅してしまいます。当時飼育されていた54頭のヨーロッパバイソンの中から生殖が可能だった12頭の純粋種で20余年にわたって人工繁殖を行い、1952年に最初のヨーロッパバイソンをビャウォヴィエジャの森に再導入することに成功しています。
野生のヨーロッパバイソンを観に行く
ガイドさんの案内による野生のヨーロッパバイソン観察に参加しました。早朝にホテルを出発し、夜が明けきらない薄暗いビャウォヴィエジャの町をバスで緩やかに進みます。しばらくは民家や道路脇の木々がヘッドライトに浮かび上がっていましたが、森が途切れ開けた草地でガイドさんが赤外線温度センサーのスコープでヨーロッパバイソンを見つけました。バスを降りガイドさんの先導で静かに草地を進み、刺激しない程度の距離を保った場所から観察。望遠レンズでヨーロッパバイソン2頭のシルエットを捉えてシャッターを切ったものの、暗すぎて明瞭な画像は得られませんでした。
ヨーロッパバイソンに合える保護区
早朝のヨーロッパバイソン観察の後、ビャウォヴィエジャ保護区へ。ここではヨーロッパバイソンが飼育されているので、間近で観察することができます。隆起した肩と頭部から背部にかけての長い体毛……まさにイメージどおりのヨーロッパバイソンが、ほんの数メートル先にいます。じっくり粘ってその勇姿をカメラに収めたかったのですが、見学時間の都合もあり撮影時間はほんの数分でした。保護区にはヨーロッパバイソンのほかにも、ポーランドのコニック馬、ヘラジカ、シカ、ノロジカ、イノシシ、オオカミ、オオヤマネコ、バイソンと牛の交雑種である「ズブロン」などが、自然に近い環境で飼育展示されています。
ビャウォヴィエジャ国立公園をハイキング
ポーランド側のビャウォヴィエジャの森の約6分の1(10,517ヘクタール)がビャウォヴィエジャ国立公園として保護管理されています。特別保護区には厳しい立ち入り制限があるので、観光客は立ち入りが許されたルート内をライセンスガイドの同行で森を散策をするか、観光ルートを馬車で巡るかを選びます。「原生林の黄金の秋を漫喫」が目的なので、もちろん前者を選びました。
公園内のハイキング当日は残念ながら小雨模様。それでも曇った空からの陽光で浮かび上がる黄金の森は神秘的で美しく静謐な空間であり、呼吸する空気も特別なものに感じられます。足元広がる落ち葉の絨毯は黄緑から黄色そして黄味がかった茶色へのグラデーションで、雨に濡れて光っていました。
12000年前と変わらない風景の中で育まれるもの
ガイドさんに案内されて、12000年前と変わらない風景という公園内を進んでいきます。散策するためのルートは整備されているものの、一歩外れると手付かずの自然が広かっています。森を歩いていて気づくのは、倒木や落ち葉が多いこと。人の手が入らないように厳重に保護された空間にある朽ちた木々や葉は、昆虫をはじめとして、さまざまな種類のキノコ、カビ、バクテリアにとって心地の良い住処となっています。そのなかには絶滅の危機に瀕しているものも少なくないということです。
突然の予定変更と奇跡的遭遇
森の散策では、幹折れや倒木などで生じた光の差し込む林床に幼木が育っていたり、冬季の急激な寒さで木の幹が裂ける「凍裂」の跡があったり、雪の重みで幹がたわんだ木々も多く見かけました。
ハイキング時間の3分の1程度が経過したとき、公園の外で待機しているバスのドライバーから電話連絡が入りました。公園の入り口付近に野生のヨーロッパバイソンが現れたというのです。このまま進むか、バイソンを観に戻るかです。結論はすぐに出て、入り口付近に向かうことに。30分程度で出現場所に到着しましたが、バイソンの姿はありません。ドライバーが差し出したスマホにはゆったり歩む1頭のバイソンの姿が映っていました。
まだ遠くに行っていないと判断したガイドさんは、近くの木立の中に誘導してくれました。そしてなんという嗅覚でしょう! 間もなくバイソンを見つけてしまったのです。彼女が指差す方角にカメラの望遠レンズを向けると木々の隙間からヨーロッパバイソンが見えました。使い慣れない600ミリの超望遠と腕の未熟さ、そして興奮のせいで、写真はちょっとピンボケ。それでも最高の記録と記憶になりました。
ポドラシェ地方の緑豊かなビャウィストク
今回訪れたビャウォヴィエジャ国立公園のあるビャウィストクはポーランド北東部、北ポドラシェ低地に位置するポドラシェ県の県都です。人口約30万人のポーランド北東部最大の都市で、街の中心部にはビャウィストク大聖堂や聖ロッホ教会、そして「ポーランドのヴェルサイユ」と呼ばれる豪壮なブラニツキ宮殿など歴史的名所が数多く存在しています。リトアニア、ベラルーシ、ロシアとの国境も近く、非常に文化的に多様な都市でもあり、人工言語「エスペラント語」の創始者ルドヴィコ・ザメンホフの出身地としても知られています。
12000年前にタイムトラベル
1世紀に及ぶ継続的な保全努力の結果、ヨーロッパバイソンの野生個体群は増加しています。そして2019年に約6,200頭までに回復したのを受け、2020年には国際自然保護連合の絶滅危惧カテゴリーは「危急(VU)」から「準絶滅危惧(NT)」に移動しました。
12000年前と変わらない原生林「ビャウォヴィエジャの森」で、森の象徴である「ヨーロッパバイソン」に出合う旅。動植物をいつくしむ自然愛好家にとってはまさに聖地の一つであり、そうでない方にとっても実現可能なタイムトラベルと言えます。今回は秋に訪れましたが、ビャウォヴィエジャ国立公園は、四季を通じて原始的で豊かな自然を発見する機会を提供してくれます。次の旅先の候補に加えてみませんか。
取材協力:ポーランド政府観光局
公式ホームページ:https://www.poland.travel/ja
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