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一年のうち、最も昼の時間が長くなる6月21日の夏至の日、フランスでは街中が音楽の舞台に変わります。6月21日は、毎年フランスが国を挙げて「フェット・ドゥ・ラ・ミュージック(Fête de la musique)」と呼ばれる音楽祭を開催する日。誰でもどこでも音楽を奏でることが許される、まさに音楽の祭典のような一日なのです。駅前、路地、教会、街の広場。あらゆる場所から音が生まれ、人々は歌ったり踊ったりしながら夏の訪れを祝います。今回は、そんなフランスの音楽祭について、歴史的背景とともにご紹介します。
誰でもどこでも好きな音楽を奏でられる一日

日本より緯度が高く、さらにサマータイムを導入しているフランスの夏は、21時ごろまで太陽が街を照らす明るく開放的な季節です。その中でも最も日照時間が長い6月21日の夏至の日にフランスの街を歩くと、至るところからさまざまな楽器の音色や歌声が聞こえてきます。クラシックやロックをはじめ、ジャズにポップ、聖歌、さらには民族音楽まで、街中でありとあらゆる音が入り混じるその様子はまさに「音楽祭」。
この音楽祭は、フランス語で「フェット・ドゥ・ラ・ミーュジック(Fête de la musique)」と呼ばれ、毎年6月21日にはフランス各地で無数の音楽イベントが無料開催されます。プロもアマチュアも、誰もが好きな場所で演奏できる特別な一日。特に夕方から夜にかけて、街は音楽の熱に包まれ、仕事や学校帰りの人々は路上に繰り出し、そこかしこで流れるリズムに身を任せます。
40年以上も前から続く一大イベント

今でこそ夏の風物詩と化したフランスの夏至の音楽祭ですが、始まりは40年以上も前にさかのぼります。イベントの発端となったのは、フランス文化省が実施した国民の文化的習慣に関する調査でした。当時の文化大臣ジャック・ラングは、この調査の結果から「なんらかの楽器演奏をする国民は500万人もいるにもかかわらず、その大半が目立った音楽活動ができずにいる」と知りました。そこで彼は、「音楽を楽しむすべての人が自己表現できる場を提供しよう」と声を上げたのです。
この声をきっかけに、作曲家モーリス・フルレが指揮を取り「分野を問わず、あらゆる音楽を楽しむ一日」として、1982年6月21日に初めての音楽祭が開催されました。新しい試みでありながら、この日フランス各地では数多くのミュージシャンたちが夜まで音楽を奏で続け、イベントは大盛況を見せたといいます。この1982年の成功から、翌年以降も夏至の音楽祭は毎年開催され続け、フランスの夏の恒例行事となっていきました。
フランスから世界へ広がった音楽祭ムーブメント
フランスで大成功を見せた音楽祭は、1985年以降、フランス国内にとどまらずヨーロッパを中心に世界各国へと広がっていきました。現在では、夏至前後になると120カ国以上で同様のイベントが開催されており、音楽祭が世界的なイベントとしても定着していることが伺えます。このグローバルな広がりと成功を受けて、フランスでは1998年に音楽祭を記念した切手が発行されるなど、その文化的価値の高さが改めて認識されました。
刑務所や病院でも

6月21日に音楽が奏でられるのは街角だけではありません。この特別な日は、学校や刑務所、病院といった公共施設でも楽器の音や合唱が響き渡り、そこにいる人々の心をつなぎます。「音楽を自由に楽しみ、自己表現できる場を」というイベント開始当時の目的に加え、今では音楽祭は「コミュニティにおける交流や連帯を深める」という役割も担っているのです。
また、伝統音楽や民族音楽など、日常生活ではなかなか耳にすることのないジャンルの音楽に触れることができるのも音楽祭の大きな魅力です。ジャンルの垣根を越えてさまざまな音が共存する空間は、時代とともに変化していく音楽の流れを体感させてくれます。
音に包まれて感じる夏の訪れ

筆者がフランスに暮らし始めてまだ間もなかった頃、「夏至の日は街中で音楽が演奏される」という話は聞いていたものの、当日を迎えるまではその情景がまったく想像できずにいました。
しかし実際に6月21日を迎えてみると、自宅にいても四方八方から聞こえてくるさまざまな音色に、「これが音楽祭か!」と圧倒されたのを覚えています。夕刻になっても高く輝く太陽光と音楽が街を包み込むようで、家にじっとしていることなどできませんでした。思わず外へ出て、音に導かれるままに街を歩き回ったあの日以来、音楽祭は私にとっても、フランスの夏の訪れを感じる特別な日になっています。
ギターにバイオリン、トランペット。数メートルおきにまったく異なるジャンルの音が響き合うその様子は一見混沌としていますが、街ゆく人々がみな幸せそうにリズムを楽しむ姿は、とても心地がいい印象を与えてくれます。この夏フランスを訪れる機会がある方は、ぜひ音楽祭の熱を肌で感じてみてくださいね。
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