時間も費用も節約できて、現地滞在を目一杯楽しめる
長距離フェリーで楽しむ周遊旅行【前編】

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【前編】コスパ、タイパのいいフェリー旅を楽しむには

苫小牧港に停泊するフェリー
苫小牧港(西港)に停泊する太平洋フェリーの船舶

「動くホテル」とも呼ばれる長距離フェリー。移動と宿泊を兼ね、到着地では朝早くから行動することが可能です。運賃には宿泊費も含まれますので、コストも時間も節約できます。そして今、日本各地の航路には新型船が導入され、快適度も大幅に向上しています。お得に快適に移動できる、長距離フェリー旅の魅力を2回にわたってご紹介します。

長距離フェリーの就航ルートはどこを結んでいる?

苫小牧港に停泊するフェリー
太平洋フェリーは日本最長のルート、名古屋~苫小牧間に航路をもつ

長距離フェリーとは片道の航続距離が300km以上の旅客フェリーを指します。本州と北海道を結ぶルートや関西と九州を結ぶルートなどがあります。複数の船会社がさまざまな船舶で運航していますが、日本長距離フェリー協会のサイトを見れば、運航ルートが一目でわかり、各社のサイトに飛ぶこともできます。

日本長距離フェリー協会
港に停泊するフェリー「さんふらわあ」
商船三井さんふらわあの関西~別府航路には、日本発のLNG燃料を使用する船が導入されている

旅に組み込みやすいのは、発着地と就航する船の数が多い関西と九州を結ぶルートです。なかでも瀬戸内海を航行するルートは、波が穏やかで船が揺れにくいため、フェリー旅に慣れていない人には特におすすめです。

フェリー旅の楽しみ方

フェリーの船首から見える苫小牧港
名古屋から約1300kmの船旅を経て、苫小牧港(西港)が見えてきた。

フェリー旅の醍醐味は、ゆったりとした旅ができる点にあります。フェリーでの移動は時間がかかりますが、乗船したまま食事や入浴、睡眠をとることができ、身体を休ませた状態で長距離の移動ができます。国内外の豪華クルーズ船のようなエンターテインメント施設はありませんが、動くホテルとして楽しめるよう、各社がさまざまな施設を整え、サービスを提供しています。

たくさんのテーブルと椅子が並ぶフェリーの公共スペース
この船のカフェ近くのテーブルは飲食利用客優先だった

船内でのおすすめの過ごし方は、公共スペースを利用し、眺めのいい場所でのんびりすること。多くの乗客が窓際の椅子に座り、読書や海の景色を楽しんでいます。カフェに隣接した席は、カフェの営業時間中はカフェ利用客優先にしていることもありますので、テーブルや周辺の注意書きを確認して利用しましょう。

名港西大橋を通過するフェリー
名古屋港を出てすぐに通過する名港西大橋を見るために、夜にもかかわらず乗客はデッキに出ていた

天候や時間帯によって入場が制限されることもありますが、デッキに出て過ごすのもフェリー旅ならではの爽快さを楽しむチャンスです。出航前後は港を出る準備で忙しいクルーや地上で働く人々の仕事の様子を垣間見ることができますし、出港地によっては大きな橋の下を通過するという面白い体験もできます。ルートによってはすれ違う僚船の姿を見るチャンスもあります。

海から見た鳥海山
フェリーから見た、秋田県と山形県の県境にそびえる鳥海山

春や秋など、東北地方と関東地方の気温差が大きい時期は、時々デッキに出て気温の変化も体感しましょう。飛行機や新幹線では目的地に着いた途端に、大きな季節の違いを感じますが、船旅では徐々に、しかし加速度的に変化する季節の移り変わりを身をもって味わうことができます。

フェリーから見える新潟港のトラック群
新日本海フェリーの船舶は新潟港に発着する。地上の作業を見ていると飽きない

豪華クルーズ船とは違い、ドレスコードはありません。ただし、レストランへの浴衣、スリッパ(部屋備えつけのサンダルなど)姿での入店は不可とされています。1泊2日であれば船内で過ごすための特別な準備は不要だと思いますが、2泊以上の航路を利用する場合はリラックスして過ごすことができる服装を準備しておくと快適に過ごせます。

カプセルタイプからスイートまで揃う客室

フェリー「むらさき」のセミスイート客室
関西~別府を結ぶ最新船「むらさき」のセミスイート客室

現在、フェリー船の大部屋は減っており、カプセルホテルのようにロールカーテンで仕切られる寝台個室や、鍵がかけられる部屋が増えています。船によってはシティホテル並みに整った、バリエーション豊富な部屋が揃っています。ペットと共に過ごすことができる部屋も多くのフェリーに設定されています。

フェリーのバルコニー付き客室から見える夜の港景色
部屋の追加料金は高くなるが、バルコニーのある部屋ならいつでも外の風に当たって景色を楽しめる

予算があれば海が見られる窓やバルコニーのある部屋をおすすめしますが、シングルルームの場合は窓なしの部屋がほとんどです。窓のある部屋に滞在するには、2~4人用の部屋をシングルユースで利用する必要があり、割り増し運賃がかかります。

窓のない部屋に滞在していても、日中は公共スペースで過ごし、寝るために部屋に帰るという選択肢もありますので、予算に応じて部屋を選びましょう。船舶会社によっては、オフシーズン時には2人以上用の個室をシングルで利用しても追加代金がかからないプランを提供していることもあります。

フェリー内に掲載された客室の空室状況案内
「さんふらわあ むらさき」の船室はさまざまなタイプが揃う。空室があれば当日の乗船、アップグレードも可能だった

カプセルホテルタイプの寝台利用ですが、他の寝台の物音はそれなりに聞こえてきます。他人の気配が気になるようなら、鍵がかかる部屋で旅することを強くおすすめします。

郷土料理も食べることができる船内レストラン

フェリーの夕食ビュッフェ
名古屋~苫小牧を結ぶ太平洋フェリー「いしかり」の1日目の夕食ビュッフェ。2日目はメニューの一部に変更があった

長距離フェリーの大きな楽しみのひとつがレストランでの食事です。ビュッフェで提供する船が多く、発着地や寄港地の郷土料理などもメニューに上ります。サラダやおかずと主食のほか、ソフトドリンクやデザート(アイスクリームやプチケーキ)も含まれます。料理はまめに補充されるので、品切れになる心配はあまりありませんが、できたての料理をいただくには開店直後に訪れるのがおすすめです。

フェリーのレストランの窓側席
「さんふらわあ むらさき」のカウンター席。海を見ながら食事ができる

レストランの座席は多くのスペースが自由席です。ビュッフェ利用の場合は食事中を示す札を置く仕組みになっていることもあります。複数人で利用できるテーブル席が多いですが、ひとりでも気兼ねなく利用できるカウンター式の席もあります。食事をとりに行く時は、貴重品を置いたままにして席を外さないよう、気をつけましょう。

フェリーのアラカルトメニュー
苫小牧~秋田~新潟~敦賀を結ぶ新日本海フェリーの船ではアラカルトの食事が提供される

レストラン以外での食事は、カフェで軽食を取るか、買い込んだ食料品を食べることになります。個室であれば食事や飲み物の持ち込みはOKですが、大部屋やカプセルタイプの寝台への飲食物持ち込みは許可されていません。飲食が可能な公共スペースを利用しましょう。自動販売機やショップでは、お酒を含む飲み物やカップラーメンなどを扱っていることもあります。

長距離フェリーの施設

フェリーの大浴場入り口
新型船では大浴場の混雑具合をモニターでチェックできる

日本の長距離フェリーならではの施設としては、オーシャンビューの大浴場があります。荒天時は利用できませんが、なかには露天風呂を備えている船舶もあります。シャンプーやボディソープ、ヘアドライヤーなどは備えられていますが、タオル類は持参する必要があります。大部屋やカプセルタイプの寝台を利用する場合、タオル類のサービスはありませんので、乗船前に準備しておきましょう。ゲームコーナーやカラオケルーム、自動販売機があるのも日本のフェリーならではのサービスです。

フェリー内にある撮影スポット
記念撮影スポットにはクルーのコスチュームが置いてあることも

このほか、コインロッカーやランドリールーム、マッサージチェア、記念撮影用の衣装、ペット用のスペース、ビデオ視聴用ルームなどを備える船も多く、各社ウェブサイトの船舶情報でどんな施設があるかを確認することができます。

フェリー船のマッサージチェア
オーシャンビューのマッサージチェアが備えられている船もある

船内ショップでは、発着地や寄港地の名産品のようなお土産のほか、おやつやお酒のつまみ、アルコールを含むドリンク類、アイスクリームなどを売っています。また船や船会社のオリジナルグッズ、御船印なども扱っていますので、一度はのぞいておきましょう。

フェリー船のショップで販売されているお土産品
北海道を発着する船のショップでは、人気の北海道土産が購入できる

今回の記事ではフェリー旅の楽しみ方と船内での過ごし方、施設やサービスについてご紹介しました。次回はフェリー旅の組み立て方や、予約方法、さまざまな注意点などについて紹介します。

🔗「【後編】旅の組み立て方、手配はどうすればいいの? 船上生活のヒント」に続く

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小山田浩明(おやまだ ひろあき)
EXSENSES公式ライター

フリーランスのフォトグラファー。会社員時代は、海外旅行ガイドブック編集部で52カ国を担当。特に北欧、スイス、オーストラリアの取材経験が豊富。

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