九州のふたつの島で猫たちと触れ合う、
福岡県「相島」と熊本県「湯島」を巡る2日間の旅

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相島は、2013年に世界5大猫スポットのひとつに選ばれた

日本には島の人口よりも猫の数が多いほど猫密度の高い、「猫島」と呼ばれる島がいくつかあります。特に瀬戸内海と九州、沖縄に有名な猫島が点在しており、福岡県の相島(あいのしま)はアメリカのメディアCNNによって、世界5大猫スポットに選ばれました。また熊本県の湯島(ゆしま)は、地元の熊本日日新聞が、夕刊で猫と人々の暮らしぶりを特集し、写真集を出版したことで話題になりました。今回は、人なつっこい猫たちが暮らすこれらの島を、2日間で訪れるモデルプランをご紹介します。

本文で紹介している見どころやスポットは以下の地図からご覧いただくことができます。

相島ってどんな島?

福岡空港到着直前に見ることができた相島。空港から最も簡単にアクセスできる猫島だ

相島は、福岡市北東に隣接する新宮町の沖合に浮かぶ島です。2025年4月末の住民基本台帳による人口は208人で、島にいる猫の数は200匹を超えていると言われています。CNNが宮城県の田代島(たしろじま)と共に世界5大猫スポット(日本から2カ所選んだため実際には6スポット)に選んだため、世界的にも知られるようになり、外国人客も数多く訪問しています。

島の南側では真珠の養殖も行われている。真ん中に見えるのは鼻栗瀬(はなぐりせ)、通称めがね岩

島の歴史は古く、万葉集や古今和歌集にもうたわれています。また対馬島、壱岐島を経由して日本を訪れていた「朝鮮通信使」をもてなす場所として、重要な役割を果たしていました。島では当時の交流の名残を見ることができます。猫島と呼ばれる島は規模が小さく、見どころも特にない島が多いですが、相島には見どころが点在しています。島を1周する道路は起伏があり長さ5km以上に及びますので、景色も楽しむことができます。

島の北東部にある遺跡「相島積石塚群(あいのしまつみいしづかぐん)」

相島では、島猫たちの生態研究が行われてきました。NHKの動物番組「ダーウィンが来た!」でも、島猫たちの生態がたびたび紹介されています。雄猫が積極的に子育てを助ける様子など、新発見の映像が記録されたこともあります。

「ほれ、もふれ」とばかりにゴロンと寝そべる第一島猫

コロナ禍を経て、島猫たちの生活環境は大きく変わりました。以前は自然繁殖に任せるままでしたが、2021年に一斉に去勢手術が行われました。コロナ前は1枚の写真に10匹近くの猫たちが映っているほどの密度でしたが、今はぱらぱらと散らばっているという印象です。それでも猫たちのフレンドリーさは以前どおりで、人の姿を見ると駆け寄ってきて、目の前でおなかを見せてくれる子もいます。

湯島ってどんな島?

港には島の見取り図があるので、そちらを参考に散歩に出かけよう

天草諸島に属する周囲4kmほどの島です。有明海の南部、長崎県の島原半島と熊本県の大矢野島の間に位置し、大矢野島の江樋戸(えびと)港からフェリーでアクセスできます。2020年の国政調査のデータでは、島の人口は216人。猫は200匹近くいると考えられています。

湯島の民家や郵便局、商店は山の斜面に建てられている

島の最高地点の標高は104m。湯島の頂上部分は平らで開けた土地になっていますが、ほとんどの民家と宿、郵便局、神社などは南部の斜面に建っており、自動車が通れない細い道を上る必要があります。

船着場のすぐ近くには談合島の由来を示す案内がある

湯島は「談合島」とも呼ばれています。1637年から1638年にかけて起きた「天草・島原の乱」の際に、各地の一揆軍の指導者たちが湯島に集まり会議(談合)を開いたため、談合島という名が付きました。島の頂上にある峯公園には、談合島の碑やキリシタンの墓碑、展望台などがあります。

島の西部の灯台に至る海岸線は景色がよく、大樹の木陰で休むこともできる

地元紙の熊本日日新聞は、連載企画「猫島ありのまま 上天草・湯島」「日めくり猫島 湯島」という特集記事を夕刊に掲載していました。猫目線のローアングルで撮影された写真は、島猫の暮らしぶりと島民のかかわりがよくわかる、幸せいっぱいの映像であふれています。島の猫たちは、ほかの島と比べても人との距離が短く、「うちの子」気分で触れ合うことができます。

インスタグラム「湯島猫島ありのまま」
https://www.instagram.com/kumanichi_nekoshima/reels/?hl=ja

島のシンボルツリー「あこうの樹」の下は、島猫の集会場になっていた

「猫島 ありのまま」で幸せそうな猫たちの姿を見ることができる湯島ですが、感染症の広がりにより、一時猫の数が半減する事態になったこともありました。幸いワクチン投与により、感染症は収まっており、現在は大学生たちも参加して猫たちの健康管理が行われています。

2日間で楽しむモデルプラン

相島はアクセスしやすい島ですが、湯島は熊本駅からも離れており、アクセスに時間がかかります。しかし、博多に滞在していれば、両方の島を1日ずつ、丸2日間で巡ることが可能です。博多駅発着で、効率よく結ぶことができるスケジュールを組んでみました。運行時刻は2025年5月時点確認のデータです。

1日目 福岡県新宮町 相島を訪問

相島に渡るフェリーが発着する新宮港でも猫たちの姿が見られる

8:08 JR博多駅
↓電車で移動
8:26 JR福工大前
↓駅北口のバス乗り場へ移動

8:36(土日は8:40発) バス停「JR福工大前駅」
↓バスで移動
8:46 相島渡船場

JR福工大前駅のバス停留所。行きは「相らんど線第1ルート」に乗車

9:20 新宮発
↓フェリーで約20分(切符は渡船待合所内奥の自動券売機で購入すること)
9:37 相島着

ワンポイントアドバイス

次のフェリーは11:30の到着です。島でお昼を食べるなら、次の便のお客さんが到着する頃に店に入っておけば混雑を避けることができます。

相島に到着した新宮発のフェリー「しんぐう」

16:00 相島発
↓フェリーで17分(切符は港前の待合所で購入しておくこと)
16:17 新宮着

新宮の渡船待合所正面。左手にバス乗り場、建物内右奥に自動券売機がある

16:29 相島渡船場
↓バスで移動
16:39 JR福工大前駅
↓徒歩でJR線の乗り場に移動

16:51 JR福工大前
↓電車で移動
17:10 JR 博多駅

ワンポイントアドバイス

バスの運行時刻は2025年3/1~10/31の夏季タイムテーブルです。冬季(11~2月)は相島渡船場発16:29の第7便がないので、モデルプランどおりでは、港で1時間40分ほどの待ち時間ができることになってしまいます。ご注意ください。

GWや行楽シーズンの土日などは、船が定員オーバーになり、予定していた便に乗れないということも起こり得ます。モデルプランでは公共交通機関を使い、できるだけ効率よく巡るタイムテーブルを紹介しましたが、島の訪問を最優先するなら、船着場までタクシーを使うなど、早めに行動することをおすすめします。

2日目 熊本県上天草市 湯島を訪問

湯島は相島の半分ほどの大きさの島

6:42 JR博多駅を出発↓新幹線「つばめ309号」で移動7:30 JR熊本駅着↓熊本駅白川口(東口)のバス停に移動

湯島に渡る江樋戸(えびと)港まで徒歩10分の距離に位置する、商業施設「さんぱーる」

8:03 熊本駅出発
↓バスで移動
9:28 さんぱーる
↓港まで徒歩約10分

江樋戸港の湯島行き船着場。近くには待合所もある

10:00 江樋戸(港)発
↓船で所要約25分(切符はない。乗船料は船のなかで現金で支払う)
湯島着

港の前のメインストリート。ここを歩くだけで猫たちと触れ合える

14:00 湯島(港)発
↓船で所要約25分(乗船料は船のなかで現金で支払う)
江樋戸着
↓港から徒歩約10分
さんぱーる

さんぱーるのバス乗り場は、施設の港(西)側に位置しており、雨風を避けることができる待合所がある

15:07 さんぱーる
↓バスで移動
16:32 熊本駅着

熊本から新幹線を使えば約40分で博多に移動できる

17:04熊本駅発
↓新幹線「さくら568号」で移動
17:43 博多駅着

ワンポイントアドバイス

湯島は熊本からアクセスしても片道約3時間かかります。しかし、道中の景色が美しく、島の猫たちとの触れ合いも濃厚に楽しめることを考えると、それだけの時間をかけて訪問する価値は十分にあります。

熊本の交通機関利用時の支払いですが、路線バスと一部鉄道では、SUICAなどの全国交通系ICカードが、2024年11月16日以降使えなくなりました。その代わりクレジットカードのタッチ決済が導入されています。

三角発ローカルバスからの眺め。島旅の醍醐味を味わえる車窓

行動する時間帯によっては、熊本~さんぱーる間移動の際に直行バスを使わず、熊本~三角(みすみ)間をJRで、三角~さんぱーる間をバスで結んだほうがいいかもしれません。三角のバス停はJR駅舎を出て道路の向かい側、駅舎から見て右手前方にあります。

猫島での食事と滞在

相島の食事処「丸山食堂」の定食なら、新鮮な刺身が食べられる

相島は釣り人が多いこともあり、昔から営業する食堂のほか、複数の飲食店があります。相島の宿泊施設は1軒で、素泊まりのみの受け付けです。島に滞在するつもりなら、必ず事前に電話で確認して訪問しましょう。

湯島には食事も出してくれる旅館が複数ありますが、食事処は少ないので、営業日を事前に確認し、予約を入れたほうが安心です。訪問客が多い土・日だけオープンする店もあります。行ったらなんとかなるだろう、は猫島の旅では通用しませんので、情報収集を行い、準備しておきましょう。

相島と湯島でのトイレ利用ですが、港近くの待合所に併設されており、待合所も風雨にさらされないような作りになっています。また飲み物は自動販売機で入手できます。

島の猫に遊んでもらうには

遊んでやるかニャ、と寄ってきてくれた相島の猫

島の猫たちはフレンドリーな子が多く、自然に寄って来てくれます。しかしエリアによっては警戒心が強い子もいて、遠くからこちらを眺めてくるだけということも。まずは猫たちが安心して近づいてくれるように行動することをおすすめします。

具体的には「大声を出さない」「猫を追いかけない」「立っていたらしゃがんで背を低くする」「あまりじっと見つめない」などです。人がしゃがむのは餌をくれる前の動作だと学習している子もいるので、しゃがみ込めば多くの猫たちが反応してくれることでしょう。

湯島のこの女の子は首輪をつけていた

猫が近づいてきたら、あとは猫たちに任せましょう。膝の上に上ろうとする子がいれば、隣にちょこんと座ったり、体をぴったりと寄せてきたりする子など、リアクションはさまざまです。こちらから触れるときは、尻尾の付け根のおしりの部分を軽く叩いてあげたり、顔の回りをなでてあげたりしましょう。

寒い日は暖をとるためにか体を寄せてくることが多い。暑い日は日傘をさしているとその日陰に入ってくる子も

島の猫たちは地域猫のように世話されていますが、生活環境は厳しく、平均寿命は数年と言われています。子猫の死亡率も高いため、1歳未満の子猫には名前をつけずただ「チビ」と呼ぶ、と教えてくれた島民もいました。寄ってくる猫たちを見ていると餌をあげたくなりますが、健康管理のために、観光客による餌やりを禁止している島が多いのでご注意ください。

湯島では道案内してくれる猫も多かった

猫島滞在時の注意点

猫たちを探すなら車やバイクなどの日陰を見てみるといい

猫島と呼ばれる島は人口が少なく、観光客を積極的に受け入れる施設もありません。宿泊ができる島はいくつかありますが、観光気分で訪れると不便を感じることも多いでしょう。日本全国の猫島を訪問する際に注意したいことをまとめます。

餌は勝手に与えないこと

多くの猫島が、猫の健康管理の意味もあり、観光客は餌を与えないようにと呼びかけています。また餌やりを禁止していない島でも、マナーを守ることを求めています。「道の真ん中で餌を与えない」「餌が残らないように加減する」「残った餌は持ち帰るか、島の人に託す」などです。

特に道の真ん中で餌を与えると、猫の警戒心が薄れ、交通事故に遭ってしまう危険性があります。また残った餌をそのまま置いてくると、虫たちが寄ってきて島の人々の迷惑になります。餌をあげたいと思うなら、事前に島のルールを確認して、島で暮らす人々の迷惑にならないように行動してください。

怪我をしないよう無理のない行動を

猫島と呼ばれる島には病院どころか医師常駐の診療所がないところもあります。怪我や体調不良の場合でも、命にかかわるような状況でなければ、次のフェリーで戻るまで我慢するしかありません。怪我の手当てに必要な物品を扱う店も期待できませんので、特に子供を連れて猫島を訪れる際は、最低限の傷治療が可能なセットを持参し、怪我をすることがないよう、十分に注意して行動しましょう。

天候の変化に注意して訪問しましょう

瀬戸内海の航路なら海が荒れるリスクは少ないですが、相島のように外海の島に渡る船は、天候悪化の影響を受けることが多く、欠航になることもあります。天気予報で大雨や強風など、天候悪化が予測されているときは、船の運航状況をチェックしましょう。相島の場合は、相島発の30分前に運航状況がアナウンスされます。

猫島は貴重な存在になりつつあります

2017年当時の相島は、視界のなかに10匹以上の猫たちを見ることができたほど

今回は2日間で巡ることができる、九州の相島と湯島をご紹介しました。島の住民の高齢化とともに猫の世話ができる人が少なくなり、猫島の猫たちの数は減ってきていると言われています。島の猫たちのほとんどが野良で、餌やりや健康状態をみるなど、世話をしてくれる人がいるからこそ、生き延びることができています。猫島を再訪問した実感としては、やはり猫たちの姿は少なくなっていると感じました。

猫島の訪問・滞在は、ほかの観光地に比べ準備が必要ですが、島の猫と一緒にぼーっと過ごす時間は何物にも替えがたい貴重な経験となるでしょう。時間が許せば島に滞在し、早朝の島歩きもぜひ体験してみてください。

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小山田浩明(おやまだ ひろあき)
EXSENSES公式ライター

フリーランスのフォトグラファー。会社員時代は、海外旅行ガイドブック編集部で52カ国を担当。特に北欧、スイス、オーストラリアの取材経験が豊富。

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