当サイトではアフィリエイトプログラムを利用しています。
重ね合わせた布へ、文様を描きながら刺し縫いを施す「刺し子」。日本の伝統民芸の刺し子は、寒さから耐えられるよう保温性を高め、さらに布を長持ちできるよう、暮らしの知恵が詰まった技法です。そこで、今回は日本三大刺し子と呼ばれている「こぎん刺し」「菱刺し」「庄内刺し子」について詳しく解説します。
東北地方の日本三大刺し子とは
青森県津軽の「こぎん刺し」や青森県南部の「菱刺し」、山形県庄内の「庄内刺し子」は東北地方の日本三大刺し子と呼ばれています。刺し子は、古くから日本に伝わる技法のひとつ。
布を重ね合わせて、ひと針ひと針模様を描きながら糸を刺し縫います。物資が豊かでなかった時代、傷んでいる布の補強や防寒を施すために刺し子がはじまったと言われています。限りあるものを大切にする暮らしの知恵から生まれた技術とも言えるでしょう。
青森県津軽「こぎん刺し」
こぎん刺しの模様は、「1・3・5……」と奇数の目を数えて刺す技法です。
江戸時代の津軽藩では、「倹約令」が発令されていました。そのため、麺や絹を農民は身に付けることができず、唯一身に付けられたのは自給自足で仕立てた麻のみでした。
しかし、寒さが厳しい津軽地方の衣類として「麻」は、適した素材ではありません。そこで少しでも耐久性や保温性を高めるため、麻糸で刺し子をしたことが「こぎん刺し」のはじまりだと言われています。
なお、明治時代になると倹約令が解かれ、農民も綿花を身に付けられるようになりました。麻とは異なり綿は、保温性や耐久性が優れており、針も刺しやすいことから急激に綿糸の刺し子が進展。また鉄道の開通により、綿織物が容易に手に入るようになり、こぎん刺しは衰退してしまいました。
青森県南部「菱刺し」
菱刺しの模様は、「2・4・6……」と偶数の目を数えて刺す技法です。
こぎん刺しと似ているため、混同する方も多いでしょう。菱刺しの起源は、今から約200年前と言われています。前述したこぎん刺し同様、青森県南部も寒さが厳しい土地柄です。
麻布一枚では寒さを凌げず、裏地に綿布を付けて麻糸で刺したものが「菱刺し」のはじまりだと言われています。そしてこぎん刺しと同様に鉄道が開通後、綿織物が手に入るようになってから、南部菱刺しをする人は徐々に少なくなってしまいました。
ちなみに、菱刺しとこぎん刺しの違いは「刺し目の数え方」です。菱刺しは麻布の縦の折り目に対し、規則的に偶数の目で刺します。そして仕上がった形は、横長の菱模様となります。
一方こぎん刺しは、規則的に奇数の目で刺します。同じ青森県の刺し子ですが、目の数え方で模様は異なります。どちらにせよ、こぎん刺し菱刺しも、東北地方の厳しい寒さを凌ぐために生み出した技法です。
山形県庄内「庄内刺し子」
江戸時代中期、北前船の開通と同時期にはじまったとされている「庄内刺し子」。麻布に糸を刺す「こぎん刺し」や「菱刺し」とは異なり、庄内刺し子は、綿布へ細かい針目の模様を刺すのが特徴的です。
藍染めの木綿布に白い糸を刺す緻密な文様は、作業をしても破れないように補強をするためと、寒い冬には保温性を高めるために施されていました。さらに庄内刺し子の文様には、豊作や魔除け、商売繁盛といった、願いや祈りが込められた記号や装飾となっています。
伝統文様の意味
現在では伝統的な文様以外に、伝統的な文様をアレンジをしたものがあります。そこで、庄内刺し子の伝統的な文様と意味を一部ご紹介していきましょう。
◇ 麻の葉
代表的な文様とも言える麻の葉。六角形を規則的に繰り返し配置した幾何学模様です。模様が、植物の麻の葉に似ていることから名付けられました。麻の葉は健やかな成長を祈願して、子どもの産着(うぶぎ)へよく使われていました。
◇ 亀甲(きっこう)
六角形を連ねた「亀甲」は、亀の甲羅の形に似ていることから名付けられました。もともと亀甲は、中国から日本へ伝わった模様です。長生きする亀は長寿の象徴とされており、貴人や神秘的なものに使われる模様とされています。
◇ 七宝つなぎ(しっぽうつなぎ)
「七宝」は、同じ大きさの円を4分の1ずつ重ねる模様です。四方のどちらへ向いても永遠に続くことから縁起が良いとされています。「四方」から「しっぽう」となり「七宝」と呼ばれるようになりました。ちなみに、七つの宝とは「金・銀・瑠璃・瑪瑙(めのう)・珊瑚・水晶・パール」のを表しています。
◇ 紗綾形(さやがた)
卍(まんじ)を崩して連続させた模様の「紗綾形」。江戸時代の舶来の絹織物に、紗綾の地紋に使用されたことから名付けられました。「家の繁栄」「長寿」などの願いが込められている模様です。
◇ 矢羽根(やばね)
矢羽根の柄は破魔矢に由来しており、魔を払うという意味があります。また、幸せを求めて飛んで行ってくださいとの意味もあるようです。
暮らしに「刺し子」を取り入れ資源を大切に
今回は、こぎん刺しや菱刺し、庄内刺し子についてご紹介しました。刺し子は最後まで布を大切に扱い、補強や保温性を求め庶民の暮らしの知恵からはじまりました。刺し子は「針と糸と布」があればできます。これを機に、お気に入りの文様で刺し子に挑戦してみてはいかがでしょうか。
当サイトではアフィリエイトプログラムを利用しています。